3つ目の準備は、資金をどれだけ用意しておくかについてだ。小谷氏は「お金が心配になったら見積もりを取ること。高齢になるにつれ、来てほしい友人知人は減っていくから、今この時以上に葬式費用が上がることはない」と話す。

 事前に見積もりを依頼すれば、悪質な業者を排除する手がかりにもなる。「費用の細目が見積書にしっかり記されていて、費用が変動するリスクまで説明してくれる業者ほど安心」(小谷氏)

(写真=PIXTA)

 いつか来る死から目をそらすことなく、過度に心配をすることもなく、できれば残される人とともに考えて準備をする。そうした気構えがあれば、誰もが納得のいく「最期の買い物」をすることが、できるはずだ。

葬式業界、透明化なお遠く

 2017年に国民生活センターに寄せられた、葬式に関するトラブルの相談件数は636件。08年から50%も増えた。同時期の死者数の増加(18%増)を考慮しても、トラブルが頻発していることが分かる。ピークの15年からはやや減少しているが「依然、高止まりしている」(同センター)。特に目立つのが「見積もりよりも請求金額が大きかった」といった料金面での相談だ。

 05年の公正取引委員会の調査で、約半数の葬式業者が書面を交わさず口頭で契約している実態が明らかになるなど、葬式業界はもともとトラブルを生みやすい商習慣があった。しかし、イオンをはじめとした他業種が均一料金を掲げて葬式仲介に参入したことで「既存業者の間でも取引の適正化が進んだ」(大手葬式会社)。それなのになぜ、トラブルが増えるのか。

 多くの葬式業者の顧問を務める武内優宏弁護士は「一部の業者に、単価下落への焦りがあるようだ」と指摘する。

 家族葬や直葬などシンプルで安価な葬式の割合が増えれば、収益は落ち込む。そこで、各業者は終活イベントによる囲い込みやサービスの多角化で補おうと動いている。

 しかし、経営余力がない中小業者は「料金設定で自由がきく、病院や警察を通じた従来ルートの深掘りで、追加オプションを積極的に売り込んでいる。遺族はまだショックを受けている段階で営業を受けるので、オプションについてよく理解できない。結果的に遺族への説明が不足しがちになる」(武内弁護士)。仲介業者の目を盗んで勝手にオプションをつけたとみられる事例もあるという。市場の変化に、業者の対応が追いついていないというわけだ。「喪主が密葬を希望しているのに、故人の知人からきた葬儀の問い合わせに業者がつい回答してしまい、トラブルになる例もある」(同)という。

 冒頭で紹介した墓じまいを巡る不法投棄のように、新しいサービスには悪質な業者が混じることもままある。海洋散骨についても「台風がきたのでキャンセルをお願いしたが、『台風だろうとうちは出航する。乗船しなくても正規料金は払ってもらう』と言われた」「業者に散骨を委託したのに報告書が届かない。どこかに捨てられたのではないか」といった相談が、国民生活センターには数多く寄せられている。

トラブルの件数は高止まりしている
●国民生活センターに寄せられた葬式サービスのトラブル件数
出所:国民生活センター
(写真=PIXTA)