葬儀×IT=「葬テック」

遺影写真事業大手の「アスカネット」が取り組む「葬テック」は、業界に浸透するか

 スクリーンなしで遺影が浮いて見える焼香台、応対するAI(人工知能)会話ロボット――。会場でひときわ異彩を放っていたのが、葬儀×ITを意味する「葬テック」の看板を掲げた「アスカネット」(広島市)のブースだ。スーツ姿の係が厳かな雰囲気で応対するブースが多いなか、ここでは青いポロシャツ姿の係がカジュアルに対応、この一角だけテック系イベントの様相を呈していた。関心を集めたのは、スマートフォン、SNS(交流サイト)に対応して「訃報」「弔電」「供花・供物」を発注できるサービス「tsunagoo(つなぐ)」だ。

 「共働き、核家族の家庭が増え、葬式準備に手間をかけられない層が増えている」と同社執行役員の村上大吉朗氏は話す。訃報を電話やファクスで伝える負担は小さくなく、行き届かないケースもある。

 前出の、公正取引委員会の調査では、葬式1件当たりの参列者数は「増加」が1.1%に対して「減少」は86.8%にも及んだ。村上氏は「葬テックで故人を悼む参列の機会を増やしたい」と意気込む。

 多様化した選択肢の中からどんな葬送を希望するか。葬送業者の多くは「ほとんどの人は、周囲の人に迷惑をかけないことを重視している」と口をそろえる。ならば、墓を撤去し、シンプルな葬式に徹するのが正解なのだろうか。ことはそう単純には運ばない。

 例えば遺族に負担が少ないとされる家族葬は、一般葬のように香典がない分、喪家が全額負担することになる。また訃報を省略すると、後になって逝去を聞きつけた友人が「手を合わせたい」とばらばらに自宅を訪れてくることもある。返礼品を後日発送したりと、葬式なら1日で済むことを延々と対応しなければならないかもしれない。かつて、家庭を守る専業主婦が担ってきた役割でもある。

直葬、家族はイヤ?

 「葬式もお墓も、自分でなく残される人が担うもの。慌てて終活をする前に、この大前提を肝に銘じてほしい」。葬送の問題に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は話す。

 小谷氏が提唱する「迷惑をかけない葬送」に最低限必要なことの1つ目は、誰が自分の遺志を実行してくれるのかを確認することだ。「配偶者は第一候補になることが多いが、先に亡くなってしまうことも当然ある。年齢に応じて複数の候補を想定してリスクヘッジをする」。家族との縁が希薄化している場合は、友人も選択肢だ。

 「本人が『告別式は必要ない』と言っていても、家族の葬式を直葬ですませることに抵抗がある人も一定数いる。裏返せば、周囲の人は最後ぐらいあなたに迷惑をかけてもらいたい、と思っているかもしれない」と小谷氏は助言する。葬送を託す候補者と自分の望む葬送方法について事前に話し合い、ギャップを解消しておくことが重要だ。

 次に必要な準備は、自身が参列を希望する友人知人をあらかじめリストアップしておくことだ。

 これまでは、そこまで考えなくてもよかったかもしれない。だがニーズに応えた新規参入が葬送の選択肢を増やしているがゆえに、変化の間隙を突いた悪徳業者による冒頭のような不法投棄などのトラブルにつながっている側面もある。自分で考えなくても、身内の誰かが安心安全に弔ってくれる時代は終わりつつあるわけだ。

 葬式に関するトラブルは、通夜振る舞いや精進落としの料理など、弔問客数によって変動する費用が関連することが多い。思わぬ弔問客の増加で予算を超過してしまうからだ。「友人が葬式の案内状をSNSを使って善意で拡散してしまい、弔問客が押し寄せるケースもある」(小谷氏)

 事前にリストを準備すれば、こうしたトラブルは避けられる。喪主が「近親者と親しい方で実施する」と記してリストの友人知人に案内状を送れば、弔問客を過不足なく呼ぶことができる。