付加サービスが利益の4割

 プランの中で、通夜をせずに1日で葬式を終わらせる「一日葬」も提供している同社では、1件あたりの平均単価は60万〜70万円、都心部で人気の直葬ならば20万円強で実施できる。経済産業省の全国調査による1件あたりの売上高(約140万円)と比べると、イオンの顧客の低料金・コンパクト志向は明らかだ。

 同社は遺書の作成代行や遺品整理などサービスの多様化を進めることで、単価下落を補っている。営業利益ベースでは既に葬式以外のサービスが約4割を占めているという。

 ただし、コンパクト化だけが一本調子で広がるとは限らない。葬祭情報大手、鎌倉新書の小林史生・取締役執行役員は「家族葬、直葬がすぐに主流になるかというと疑問だ」と語る。2年以内に葬式をした40歳以上を対象とした同社の調査では、「家族葬」が4割弱を占める一方で、まだ半数以上が「一般葬」を選択していた。墓の傾向も同様だ。同社サービスを2017年に利用した墓の購入者の半数は「一般墓」を選んだ。

 「お葬式、墓を常識的に選びたいという希望もまだ根強い」と、同社ライフエンディング事業2部長の中村慎介氏は予測する。「日本の供養の文化がそう簡単に薄れるとも思えない」。弔う儀式の宗教色を排除して、有志が企画して故人をしのぶ「お別れの会」への関心も高まっている。

 つまり、葬送のトレンドに影響しているのは、低料金・コンパクト化というコスト面だけではない。見栄や世間体による「縛り」が緩み、個々人にとってより望ましい弔いの形を模索する形で、多様化が進んでいると見るべきだろう。

 多様化の中で生まれた新たな選択肢の一つが、「海洋散骨」だ。

なぜ海に骨をまくのか

自分自身の散骨を検討するために体験ツアーに参加した川端裕さん(写真=村田 和聡)

 晴れやかな夏日となった6月上旬のある日、東京・晴海の船乗り場から出発した海洋散骨体験クルーズに約20人が参加した。元会社経営の川端裕さん(79)は一人娘の長女と乗船。「正直言って最初は散骨に抵抗があった。でも墓を守っていくことは本当に大変。散骨という選択肢がある時代が来たことがありがたい」としみじみ語る。今年1月に亡くなった妻の遺骨も、本人の希望で海にまいた。「私には、お墓を守っていくことはできない」という長女の言葉も背中を押した。

 同じ船に乗っていた鶴見弥生さん(62)は「夫は亡くなり、子どももいない。誰の手も煩わせない散骨という選択は、私にとって実に自然な流れ」と晴れやかに笑う。既に死後の散骨を予約済みだが、今回のツアーには顧問弁護士を伴って参加した。鶴見さんからの委託を受け、実際に遺骨をまくのはこの弁護士だ。「弁護士から『実際の様子を確認したい』という希望があったので参加した。これで心置きなく身仕舞いができそう」

 体験クルーズを主催したハウスボートクラブ(東京・江東)の村田ますみ社長は「海洋散骨を始めた07年の依頼はわずか6件だったが、16年には250件、昨年は300件以上に増えた。日本全体でも海洋散骨は右肩上がりで、17年は1万件に達したのではないか」と推測する。村田氏が中心となって14年に立ち上げた一般社団法人「日本海洋散骨協会」は、加盟社10社未満からスタートし、現在は40社近くからなる。

 ハウスボートクラブの場合、一家族のみの乗船は25万円、他家族との合同散骨は12万円、同社に散骨を委託する場合は5万円。海洋散骨自体は死者数全体から見れば1%程度のシェアだが、認知度の高まりを受け、今後墓じまいを希望する層の受け皿にもなり得る。

 ただし、海洋散骨が現時点では法律のエアポケットになっている点には、注意が必要だ。遺体の処置を定めた墓地埋葬法には散骨についての記述がなく、法務省は「祭祀として節度を持って行うこと」と曖昧な見解を出すにとどめる。村田氏は「供養の気持ちを持たない業者も参入していることに危機感を覚える。業界内のルール徹底を進める必要がある」という。

 デジタル技術も葬送の選択肢を広げるのに一役買っている。6月下旬に2日間にわたってパシフィコ横浜(横浜市)で開かれた「フューネラルビジネスフェア」。主催の綜合ユニコム(東京・中央)が発行する「月刊フューネラルビジネス」の編集長、大坪育夫氏は「手書きで見積もりを出すなどIT(情報技術)化が著しく遅れた業界だったが、今回はITを活用する出展が目立った」と、指摘する。