企業にしても学生にしても、就活は、内定を出し、受け取ればそれで終わりではない。企業は内定辞退を防ぎ、学生は本命企業以外の内定を断る局面が待ち構えている。最新の内定辞退防止策と、禍根を残さない内定辞退法を紹介する。

(日経ビジネス2018年7月23日号より転載)

(写真=Bloomberg/Getty Images)

 「何で内定を辞退するんだ! わざわざゼミの教授の推薦状まで提出してきて、入社を望んだのはおまえだろう! 教授を連れて謝りに来い!」。都内私立大4年生のAさんは、今年6月、某企業の人事担当者から浴びせられた罵声が忘れられない。

 問題の内定が出たのは4月。Aさんにとってこの会社はいわゆる“滑り止め”で、本命企業は別にあった。このため内定をもらうことに多少の罪悪感はあったが、本命に落ちて就職浪人してしまえば元も子もない。「みんなやってるし、しょうがない」。そんな軽い気持ちでの内定受け取りだった。

キャリアセンターにまで大クレーム

 推薦状を出す慣習のない文系学部なのに、ゼミの教授の推薦状をもらってくるよう人事担当者がしつこく迫ってきたのは気になった。教授に相談したが「前例がない」と難色を示され、何とか形だけの推薦状を書いてもらった経緯がある。「推薦状の要求は、内定を辞退させにくくする仕掛けの一つだったようだ」とAさんは振り返る。

 実際、この人事担当者は推薦状を盾に、学校や教授の責任まで追及。キャリアセンターにも大規模なクレームを入れ、Aさんが本命企業に合格し入社を決断した後も、内定辞退の撤回を要求し続けた。

 「冷静な話し合いならまだしも、『おまえのところは学生にどういう教育をしているんだ!』といった脅迫まがいの折衝で閉口した。ただ担当者も、自分が管理していた内定学生が流出した件で直属の上司から相当の叱責を受けているようだった」(キャリアセンター担当者)。大学は、この企業を来年以降、学内説明会など就活行事に呼ばない“出禁(出入り禁止)”扱いにしたという。

 6月から本格化している2020年卒業生向けの就活。当然のことながらそれは内定を出し、受け取れば終わりではない。企業は内定辞退を防ぎ、学生は本命以外の内定を断る局面が待ち構えている。

 冒頭のケースはやや極端だが、企業にとっては、コストをかけて発掘した人材に、いったん受諾された内定を後から辞退されるのが大きな痛手なのは事実。ただ、就職浪人の恐れがある以上、学生に“滑り止め”で内定を受け取るな、と言うのも無理な相談だ。

 リクルートキャリアによるとここ数年、1人当たりの内定数は増加。19採用では2.29社と、企業が出す内定の半数以上は辞退されている計算だ。

 学生が理解しておくべきは、法律面から見ると「労働者はいつでも労働契約を解約する地位が保障されており、内定辞退は違法行為ではない」(労働問題に詳しいアルシエンの竹花元弁護士)ということだ。

 しかし辞退の乱発は、企業だけでなく大学にとってもよろしくない。いくら学生本人の希望とはいえ、内定辞退を乱発すれば、「後輩が採用されなくなる」など企業との間に様々な禍根を残す可能性があるからだ。

 どうすべきか。企業はなるべく内定辞退を防ぎ、大学はなるべく上手に学生に内定を辞退してもらうしかない。