インターンシップ以外の前哨戦としては、「昔ながらのOB・OG訪問」もいまだ想像以上に有効な場合がある。企業にしてみれば、何百人、何千人の候補者から選ぶ公募制は、より有能な人材が網にかかる可能性があるものの、選考コストがかかる。その点、信用の置ける人物からの紹介であれば、低コストで、かつ、公募以上に良い人材を獲得できる公算も大きい。今もOBやOGからの紹介を第1選抜の重要ルートに設定している企業が少なくないのはこのためだ。

 もっとも学生にしてみれば、このルートで本戦に駒を進めるにはOBやOGとそれなりに濃厚な関係を構築することが必要で、そもそも志望企業や志望分野に懇意の先輩がいないと話にならない。そんな就活生に役立つのが、OB・OG訪問を仲立ちしてくれるサービス。例えば「マッチャー(Matcher)」というスマートフォンアプリがある。

インターンシップだけが前哨戦ではない
●人事担当者と就活生の新たな出会い方
(写真=sapannpix/Getty Images)

 自分の目当ての企業を検索し、登録されている大学の先輩に電話での会話や面会を申し込める。都内私立大4年生のBさんの場合、マスコミ業界を志望していたが、目当ての企業に訪問できるOB・OGがいなかった。そこでマッチャーを使い、訪問を繰り返したという。Bさんの実力もあったのかもしれないが、「人事担当者につないでもらったり、選考に誘われたりすることも複数回あった」という。

 急速に進む「選考ルートの複線化」は、有能な人材と早期に接触したいと願う企業にも様々な恩恵をもたらす。インターンシップ向けのエントリーシートの情報だけから良い人材を見極めるのはそれだけ難しいからだ。

 この場合、企業にとってルートの複線化とは、学生との接点を提供してくれる新サービスを活用することだけではない。最近は、学生からの応募を待つのでなく、特定の大学に自ら乗り込みスカウト活動する企業も目立ち始めている。

「待ちの一手」を返上する企業

 とりわけ、採用にたけた企業の間で増えているのが、「知る人ぞ知る強豪地方大学」を狙う手だ。「とりあえずG-MARCHを採用せよという方針の企業は多いが、そうした大学は競合も激しい」(新卒紹介サービス企業の担当者)ためだ。

 今回の取材で複数の人事担当者から声があがったのは名古屋市内にある南山大学。地元では有名だが、それ以外の地域では詳しく知らない人事担当者も多い。「理工学部は機械工学やソフトウエア工学などで優秀な人材が粒ぞろい。意外と他社と競合していないのがありがたい」とある人事担当者は説明する。同じ文脈で、西南学院大学、東北学院大学も外せない大学だという。

 「OISTを狙っています」。ある大手精密メーカーの人事担当者はこう告白する。OISTとは沖縄科学技術大学院大学で、5年制の大学院大学。教員や学生の半数以上が海外出身者で、「語学はもちろん、機械や有機化学などで高い技術を持った学生ばかり」(人事担当者)とのこと。卒業生が今春に出始めたばかりでまだ知られていないことに加え、沖縄は物理的に遠いので他社と競合しづらいともいう。昨シーズン発掘先として紹介した、はこだて未来大学、会津大学も人気を増している。

 大学を限定して人材発掘に取り組む企業がある一方で、学生の属性を絞り込んで採用活動をする会社もある。体育会系の就活生狙いはその典型だ。

 日本大学の悪質タックル事件が社会問題化した今年も、体育会出身者を積極的に採用する方針の企業は多い。

 「体育会専用の人材あっせんサービスもあるが、自分はOBからの紹介を多用している。ツテがなければ試合に出向き、差し入れをするといった地道な作業を積み重ねるしかない」。体育会系の就活生を毎年採用しているある食品メーカーの人事担当者はこう話す。

 体育会系と同じぐらい企業が欲しがる理系のエンジニア候補生の開拓では、研究室ではなく学会の発表に直接出向くのが有効という。この方法を実践するあるIT企業の人事担当者は、「学会の発表内容を事前に調べれば研究内容も分かるし、その場で指導教官と学生の両方に会える」と指摘する。

 学生は希望のインターンシップに登録できず、企業も思うような人材と出会えない昨今就活事情。インターンシップとエントリーシートとは異なるもう一つの選考ルートに着目しなければ、学生も企業も、理想の就活が難しい時代になりつつある。