不整脈の診断・治療用カテーテルや人工血管、心臓ペースメーカーなどに特化する日本ライフラインも、ニッチ戦略では同じ。

日本ライフラインは人工血管やカテーテルに強みを持つ

 同社は1981年にペースメーカーなどの商社として東京で創業した。99年ごろからメーカー機能を持ち始めたという変わり種だ。幅広い製品を扱う大手のテルモなどとは異なり、心臓や血管に製品を絞り込んで徹底的に専門性を高めている。

 2009年には人工血管の開発をしていた医療機器メーカーを買収し、本格的に製造機能を強化。心臓や血管関連を中心とした現在の自社製品を開発していった。その手法は「機器を使用する医師に徹底してニーズを聞き、その要望に寄り添う開発をすること」(鈴木啓介社長)だという。

 かつてこの分野の医療機器は欧米製が多く、日本人の体格に合わなかったり、日本人医師の手になじみにくかったりしたという。そうした点などを改善しながら品質を上げていったのだ。

 18年3月期の売上高は422億9800万円で営業利益は106億7100万円。営業利益率は25.2%に達する高収益を実現している。

 メーカー化は成功したが、商社機能も捨てない。「新技術を導入した海外の製品をいち早く輸入することで技術の変化や動向に対する感度を保ち、国内での開発にも生かす」(鈴木社長)ためだという。特定分野の医師との太いパイプに加え、新技術情報を捉える独特の仕組みが勝ち残る力を強くした。

 「株価10倍企業」には、コスト競争や人材確保という日本経済の構造変化を受け、顧客企業の課題解決に知恵を働かせた人材関連ビジネスや、ヘルスケア領域の成長が見込まれる中で健康や医療の技術などに独自色を持つ企業が目立つ。それは日本経済の映し鏡でもある。

「株価10倍企業」経営者の原動力
危機乗り越えて成長つかむ
ランキング4位に入ったペッパーフードサービスは「いきなり!ステーキ」が大ヒット。別のチェーンで食中毒事故など起こし、経営危機に陥ったことも

 「株価10倍企業」の中には、様々な危機や苦難を乗り越えて成長をつかみ取った経営者が多い。

 1位のRIZAPについては本文で経営破綻の縁に追い込まれたことに触れたが、4位のペッパーフードサービスの経営者、一瀬邦夫社長も猛烈な逆風を経験した。「いきなり!ステーキ」の急成長で株価は50倍となったが、かつてはステーキチェーン「ペッパーランチ」の従業員による暴行事件や食中毒事故が発生。業績の悪化を余儀なくされた。

 そんな危機や苦難を乗り越えた経営者に共通するのは、「必ず成功する」という強い気持ち、アニマルスピリッツだ。ランキング2位に入った求人サイト運営、ディップの冨田英揮・社長兼CEOを突き動かしたのもそれだった。

 1997年3月に名古屋市で創業。翌年東京に移転して、コンビニの店内にある情報端末に、派遣で働きたい人向けの求人情報を掲載し始めた。しかし、端末を利用する人は少なく、会社はたちまち危機に陥った。

 「ネットで派遣の求人サイトを開いた方がいいのは分かっていた。しかし、それにはかなりの費用がかかる。(コンビニの情報端末で)利用者が増えるとは見込みにくかったが、まずクライアント企業を集めるためにもそこから取り掛かるしかなかった」と冨田社長。

 起業の際も、経営自体から学ぼうと、当時、ベンチャー育成をしていたパソナグループ創業者の南部靖之氏にコネもないのに協力を頼みに行った。様々な点で危機も覚悟のスタートだったが、「絶対に勝ち残る」という信念で立ち向かったという。

 日本マクドナルドの創業者、故・藤田田氏は社員にしばしばこう言ったという。「思いは必ず真実になる」。危機を乗り越えてこそ企業は強くなる。株価10倍企業は危機の中から育っている。