「経営のプロ」を大量にスカウト

 他社との差異化にこだわるようになったきっかけは、自分自身の挫折体験にある。瀬戸社長は03年4月、健康食品の通販会社を起業した。食べ続けるとダイエット効果があるという豆乳おからクッキーを開発し、楽天市場などで販売して大ヒット。06年には売上高が100億円に達し、札幌証券取引所の新興市場、アンビシャスにスピード上場を果たした。

 ところが、類似品が急増したことなどで売り上げが急減。08年には「経営危機に陥りかねない状況になった」(同社役員)。

 独自スタイルのフィットネス事業は、その苦い経験が生み出したものだ。「類似品の出現で顧客がすぐに離れるのは、本当に顧客が求める価値を提供できていないからだ」(瀬戸社長)と気付いたのである。そこで考えたのが、食生活へのアドバイスまで含め、トレーナーが顧客に「伴走」する仕組みだった。途中脱落を無くせば、ゴール到達率を高められると考えたのである。

 12年2月、東京にRIZAPの1号店を出し、今年6月末には127店に拡大した。これだけでも急成長だが、15年ごろからさらに新たな動きに出始めた。カジュアル衣料のジーンズメイトや補整下着のマルコ、雑貨のパスポート、女性向けアパレル通販の夢展望など計11社を次々と買収していったのである。

 フィットネス事業とは直接関係のない買収に見えるが、瀬戸社長はこんな成長ストーリーを語る。

 「ダイエットをすると、当然体形も変わるし、ファッションや雑貨など次の自己実現への関心が高まる。そこに新たなサービスを提供していく」

 ただし、選んだ買収相手の多くは業績不振企業。不安視する声は少なくなかった。成長と買収企業の再建を同時並行で進めるために瀬戸社長が打った手は、相次ぐ経営のプロの招聘だ。

 流通業の経営支援会社、リヴァンプの創業メンバーやソフトバンクグループの戦略責任者、企業買収の専門家などを次々と引き抜き、今年6月にはカルビーの松本晃・前会長兼CEO(最高経営責任者)を、グループCOO(最高執行責任者)にスカウトしたのである。

 業績の伸張だけでなく、拡大する業容に対応できる体制作りを急ぐ姿勢も株式市場からの評価につながったのだろう。ただ、業績不振企業の多くは再建に道筋をつけたものの、瀬戸社長が期待するシナジー効果を上げられるかは未知数だ。思うように進まなければ、投資効果が上がらず、グループ再編につながりかねない局面に追い込まれる可能性もある。

 他のフィットネス企業とはひと味違うサービスで成長したライザップ。2位以下にも顧客の期待に対応した企業がランクインしている。そこには日本経済の変容が映し出されている。キーワードの一つが「人材の最適活用」だ。

 「特にこの5年、メーカーの動きは大きく変わった」。ランキング11位の人材派遣会社、アウトソーシングの土井春彦・会長兼社長はこう言って続けた。「国内市場は停滞し、輸出も増やせない。自動車などの工場では数年単位での安定した生産量を予測することが難しくなり、雇用の外部化が進んだ。それを人材派遣会社である当社が補うようになってきた」

 08年秋のリーマンショック以降の不況や円高で大企業の工場は一部が再び海外へ移転した。残った工場も景気変動に生産量を合わせるために人員数を状況に応じて素早く調節するようになった。

 自動車メーカーなどの工場で働く従業員は、正社員とメーカー自身が直接雇用する期間工、そして派遣会社からの短期の「派遣工」という3層構造で成り立っている(下の図参照)。

人材派遣会社などと大手メーカーの一体化が進む
●自動車メーカーなどの工場での従業員雇用形態の変化
出所:アウトソーシング社の資料を基に本誌作成
アウトソーシング社は技術者(上)からライン従業員まで幅広く派遣する

 大企業はこのうち、正社員の数を抑え、需要の変動に応じて派遣工の人員を細かく増減させるようになった。さらに13年4月に「5年以上継続雇用した期間社員は正社員にしなければならない」とする改正労働契約法が施行されると、直接雇用の期間工の継続雇用にも慎重になり始めた。

 こうした変化に対応するため、アウトソーシング社は、14年9月から大手メーカーが直接雇用した期間工を自社の正社員として引き受けた上で、再度、元の企業に派遣する独自の仕組みを作り出した。需要変動などのリスクを同社側が負う形だが、幅広い業種の企業と付き合っているため「1社の需要が減っても他社で補うなど調整できる」と土井社長は言う。

 変化を捉えることで業績は大きく拡大した。17年12月期の売上高は13年12月期の約4.9倍(2301億円)、営業利益は約9.4倍(113億円)に伸びた。株価の大幅上昇はその結果だ。

 同社のケースは顧客企業のリスクヘッジ対応が中心だったが、工場や店舗などでの派遣人材の活用は最近、もう一つ別の形を取り始めている。それは社員をより付加価値の高い基幹業務に集中させるため、それ以外の仕事をまとめて派遣会社に委託するという新たな外部化だ。