いずれ来る人生100年時代。定年や早期退職をした後、起業を検討するシニアが増えてきた。会社員人生で嫌な仕事も我慢してやってきた分、“一国一城のあるじ”を夢に見るシニアも少なくない。もちろん、そう甘くない現実も待ち受けている。気を付けたいシニア起業の落とし穴とは。

(日経ビジネス2018年6月18日号より転載)

シニア起業家が集まる交流会は毎回盛況。ビジネスパートナー探しも(写真=竹井 俊晴)

 「今しかない。最後のチャンスだと思った」「定年して、朝起きてやることがないのは耐えられない」「定年まで働いたが、まだ働けるなら働きたい」──。

 シニア起業相談などを手掛ける銀座セカンドライフ(東京・中央)が都内のホテルで開いた交流会。集まったシニアたちは、起業した理由を口々にこう話し、うなずき合っていた。

 その一人、福田悟さん(56)は今年1月に国際展示会の出展営業を支援する会社を設立。定年まであと少しだったが、「組織の中では自分のやりたいことはできない」と2017年末に退社、自分の会社を立ち上げた。

起業するシニアは増加傾向
●銀座セカンドライフのレンタルオフィス契約者数の推移
注:レンタルオフィスに年齢制限はないが、「大半の利用者がシニア層」(同社)

起業初年度は収入ゼロ

 従業員は自分1人。同じ業界で働いていたこともあり、数件の業務契約を結び、仕事は確保した。だが「そう簡単にいかないことは分かっています」と福田さん。初年度は役員報酬を設定しないため、収入はゼロになる。ゆくゆくは展示会の主催にも携わることで年商3000万円を目指しているが、当面は貯蓄で食いつなぐつもりという。

 定年や早期退職で会社員人生を卒業してから起業するシニア起業家が増えている。世界的に起業率の低さが指摘される日本だが、シニア世代に限ってみれば、必ずしもそうとも言い切れなくなっている。

 世界の経営学者が実施する「グローバル・アントレプレナーシップ・モニター調査」が日本でにわかに高まる“シニア起業熱”を映し出す。日本のシニア起業家(55~64歳)は15年に63万人と05年から約7割増。起業率は4%と、先進国(26カ国)平均の4.6%より低いが、10年前からの上昇幅は2ポイントと、1.1ポイントだった先進国平均より高い。少子高齢化でシニア労働力への期待が高まっていることや、年金の受給開始年齢の引き上げに伴う将来不安が背景にあるようだ。