女性の社会進出が加速する中、夫婦ともにフルタイムで働く世帯が増えている。日本の平均年収に近い400万円以上をそれぞれ稼ぐ「パワー共働き世帯」だ。国内市場が縮小する中、潜在購買力を高める層に企業は熱い視線を注ぐ。

(日経ビジネス2018年4月16日号より転載)

「肉と野菜、バランス良く」「和も洋も」と依頼した牛越さん(中央)。できあがった料理を前に頬が緩んだ

 できあがったばかりの料理が次から次へとホーロー製の容器に移されていく。ニンジンの肉巻きに、トマトとブロッコリーのサラダ、ハンバーグ……、そしてこの日のメーン料理、春野菜のグラタン。おいしそうな匂いをかぎつけたのか、台所に子どもたちが駆け寄ってきた。

 「季節を感じられるように、グラタンにはアスパラガスやタケノコを入れています。あえて大きめに切ってありますので、『これは何かな』ってお子さんと話しながら召し上がってください」。彩り豊かな料理を前にそう説明するのは管理栄養士の豊永彩子さん。料理の出張作り置きサービスを展開するシェアダイン(東京・渋谷)を通じ、都内のあるマンションに派遣されていたのだ。

 サービスを依頼したのは、このマンションで暮らす自営業の牛越真希子さん(41歳)だ。会社員の夫と子ども2人の4人暮らし。「夫も私も仕事があるので、毎日の料理までは手が回らない」(牛越さん)。かつてはファミリーレストランに行くこともあったが「小さな子どもがいるので疲れてしまう」。シェアダインに作り置きを頼めば、子どものアレルギーに細かく対応してくれる点にも魅力を感じているという。

 2017年設立のシェアダインは、牛越家のような共働き世帯と、豊永さんのような料理家を結びつける。一般的な家事代行サービスと違うのは、派遣される料理家を有資格者だったり、有名レストランでの勤務経験があったりと食のプロに限定している点。料理家はあらかじめサイトに自己紹介や料金プランを掲載し、利用者は希望する条件にあった料理家に出張を依頼する。

 5月の正式開業に向け、現在は招待制でサービスを提供している。顧客からの反応は上々。利用料金は3時間で6000~1万円。食材費も別途かかるが、牛越さんは「高いとは思わない」と話す。料理を作ってもらうあいだに子どもの世話ができるなど、時間を有効活用できるのもお気に入りの理由だ。

「パワー共働き」の増加顕著に

「パワー共働き」が台頭している
●属性ごとにみた世帯数の推移
注:「 男性の雇用者と無業の女性からなる世帯」とは、夫が会社勤めの就業者で、妻が非就業者(労働力人口でないか完全失業者)の世帯。「雇用者の共働き世帯」とは、夫婦ともに会社勤めの世帯。2011年は岩手県、宮城県および福島県を除く全国の結果
三菱UFJリサーチ&コンサルティング試算

 共働き世帯が日本で存在感を増している。総務省の労働力調査によると、夫婦ともに職に就いている世帯(農林業は除く)は17年に1188万世帯と、10年前に比べて約17%増えた。

 共働き世帯の増加自体は、いまに始まったことではない。女性の就業意識の変化や男女共同参画社会基本法の施行(1999年)を受け、ほぼ右肩上がりで上昇。90年代半ばにはすでに専業主婦のいる世帯を逆転している。

 だが「ここへきて中身が変わっている」と指摘するのは、三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土志田るり子研究員。これまでは「夫が正社員、妻はパート」という場合も多かったが、「ここ数年は、夫婦で朝から晩まで働く世帯が増えている」という。共働きは共働きでも、夫婦ともにフルタイムで働く「パワー共働き世帯」が増えているのだ。

 あらためて2013年から17年までの4年間をみると、共働き世帯の総数は約11%増えている。それに対し、日本の労働者の平均に相当する年収400万円以上をダブルで稼いでいる世帯は23%の増加だ。勤務時間の統計もパワー共働き世帯の台頭を映す。会社に勤める共働き夫婦のうち、勤務時間がともに週35時間を超えるのは17年に467万人と13年に比べて約15%増えた。パワー共働き世帯は、共働きの中でも増加ペースが際立っている。