TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加が決まり、日本の農業の将来をめぐる論議がにわかに騒がしくなってきた。高齢化と放棄地の増大でバケツの底が抜けるような崩壊の危機に直面する一方、次代を担う新しい経営者が登場し、企業も参入の機会をうかがっている。農業はこのまま衰退してしまうのか。それとも再生できるのか。リスクとチャンスをともに抱える現場を取材し、生き残りのヒントをさぐる。
シリーズ
ニッポン農業生き残りのヒント

完結
147回
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最終回 農業を「天命」と言い切る幸せ
2013年にスタートしたこの連載も今回で最終回を迎える。日本の農業の未来は楽観的な状況にはなく、事態を突破するための手がかりは多様性の中にしかない。ただし、様々な処方箋のベースには農業への思いがあるべきだ。情熱なくして未…
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記者の考えを変える契機は農業者が与えてくれた
この連載は5年前に始めた。零細で効率の低い日本の農業に、企業マインドを取り入れていくプロセスで、大規模化は間違いなく大きな役割を果たしてきた。その意義は、今後も変わることはない。ただ、筆者の農業に対するスタンスは、当時い…
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退職金は学資保険に、レジェンド夫婦の就農戦略
今回も東京西部地域で新規就農した「東京NEO―FARMERS(ネオファーマーズ)!」のメンバーを紹介したい。井垣貴洋さんと美穂さんの夫婦はメンバーの間で「レジェンド」と呼ばれている。
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「虫嫌いだった」女性が東京で就農、英語武器に
東京の西部地区で続々と新規就農者が誕生している。名前は「東京NEO―FARMERS(ネオファーマーズ)!」。彼らに共通しているのは、東京都農業会議の松沢龍人さんのサポートで研修先を見つけたり、畑を確保したりして就農した点…
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早期退職視野の50代、農業学校で就農準備
農業を構成する要素を分割すると、農地と農業技術、農業をやる人の3つになる。市民農園は間違いなく、農業のファンを広げ、農業を志す人を増やすことに貢献する。その意義は、相当に大きいと思う。市民農園など農業関連サービスで成長し…
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「農協は改革すべき」という前提を疑ってみる
農業に参入した企業や、農家が企業的な経営を導入した農業法人と同様、農協の中にも頑張っているところと、そうでないところがある。農協や企業という組織の形が経営努力を規定するわけではない。今回取り上げる「となみ野農業協同組合」…
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畜産振興「エサは輸入」が招いた日本農業の危機
農業取材をやってきてずっと気になっていることがある。なぜ日本の製造業は国際競争力を持つことができたのに、農業は衰退の危機に瀕しているのかということだ。「戦後農政の出発点はコメ不足」と農中総研の平沢明彦・基礎研究部長は指摘…
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登場まで一歩、農業でウツを防ぐサービス
適度な農作業で土や植物に触れることで、ストレスが減ると同時に「幸せホルモン」と呼ばれるオキシトシンが分泌されるという。今回は「アグリヒーリング」をテーマに、順天堂大学とNTTコミュニケーションズが知見を持ち寄り、ストレス…
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挙手する「サツマイモ先生」を見て考えた
茨城県行方市にサツマイモのテーマパークとも言うべき「らぽっぽ なめがたファーマーズヴィレッジ」がある。3年目となる今年、10月末までの年間来場者数は27万人に達した。廃校と放棄地をテーマパークとして甦らせるプロジェクトは…
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財政で農家を守り、低所得層をいじめる愚
キーマンに取材して平成の農政をふり返るとともに、ポスト平成時代の課題を探る企画の第3弾。今回はこの連載の常連、福島大学の生源寺真一教授に「コメ政策」についてインタビューした。
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AIと対決、勝ったのは「農家のおやじ」だった
農家に新しいシステムやサービスを提供する企業を取り上げるときは、極力、関係する農家を併せて取材している。農家の評価を聞いてみないと、システムが本当に役に立つものかどうかわからないからだ。企業の紹介によるバイアスの懸念がつ…
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農⽔次官OBが語るガラガラポンの未来
平成の農政の重要なできごとをふり返りながら、次の課題を考える企画の第2弾。今回は1998年から約2年半、農水次官を務めた高木勇樹氏のインタビューをお届けする。ガット・ウルグアイ・ラウンドの農業合意の前年、農林水産省が発表…
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化学肥料は悪? 「疲労時のドリンク剤と同じ」
有機物の循環や環境の保全を大切にする有機農業からすれば、栽培をシステムに任せることは以前は想定できなかったことかもしれない。だが先端技術を応用するスマート農業の流れは有機農業の世界にも及ぼうとしている。
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農協×サイボウズ=「0.060秒」の衝撃
農協のベテラン職員が長年の経験を頼りに半日がかりでこなしていた仕事が、コンピュータープログラムを使うことで、わずか1秒以内に処理できるようになるかもしれない。そんな例を紹介する。
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トマト栽培を10年で黒字化、カゴメの未来工場
農業を取材していると、いまも「アグリテック」などの言葉に抵抗感を抱く人が少なくないように思う。農家の多くはこれまで通り農作業をこつこつこなし、日本の食料を支えているからだ。だが、新技術が生まれ、不連続な変化が起きようとし…
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老農林族は女子高生をどう激励したか
日本の農業はこれからどんな針路を選べばいいのか。それを考えるためのヒントは、過去の農政の中にある。今回は、自民党で長く農政に関わってきた谷津義男元農相のインタビューを紹介したい。
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JTB営業「うちがなぜ法人に農地レンタル?」
JTBは昨年12月、農業ITベンチャーのファームフェス(鹿児島市)と組み、耕作放棄地を都市の企業向けにレンタルするプロジェクト「RE FARM」を開始した。北杜市の農場はそのプログラムの第1弾で、建設仮設工事の正黄は最初…
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IT企業「農業ビジネスで人生充実」の大真面目
大手メーカーからベンチャー企業にいたるまで、栽培環境や農作業を「見える化」するためのサービスを次々に開発し、それを利用する生産者も着実に増えている。東証1部上場のIT企業のセラクが2016年から本格販売している遠隔モニタ…
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ワンマンは創業者だけに許される特権なのだ
日本の農業は今、高齢農家の急激なリタイア期に入っている。優れた技術をどう息子にバトンタッチするかが課題になっている経営もある。滋賀県彦根市で大規模農場を営むフクハラファームもそうしたケースの1つだ。
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「ICT活用農場ですね?」に「順番が逆です」
日本の稲作の未来を考えるうえで、注目すべき存在であるにもかかわらず、じっくり取材する機会がなかった農場がある。琵琶湖の東側、滋賀県彦根市で大規模稲作を営むフクハラファームだ。創業者である福原昭一さんの長男で、2017年4…
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徹底予測2021年 底打ちか奈落か
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総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
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不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
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菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
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10 Questions
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大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
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グルメサイトという幻
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
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全8回