運転者不足や荷物量の急増といった輸送業界の“悲鳴”を技術で解決する。これからの商用車で必須になるのが、コネクテッド機能だ。「故障予知」と「ダイナミックなルート探索」「自動運転(隊列走行)」がポイントになる。

(日経ビジネス2018年11月5日号より転載)

 より少ない運転者でより多くの荷物を運ぶ──。運転者不足や荷物量の急増といった輸送業界の問題を解決した者が、商用車市場での生き残りを許される。そんな戦いが熱を帯びてきた。

 解決策の前提となるのがコネクテッド機能だ。クラウドサービスや他の車両などとつながることを前提とし、輸送業界のニーズに応える機能の開発が加速している。乗用車よりも商用車の方が実用化で先行し、用途も多い。顧客に価値を直接的に提供できるからだ。例えば、いすゞ自動車は遠隔で車両の運行情報を収集・解析できるサービスを2017年に刷新。三菱ふそうトラック・バスは、20年までに10万台のトラックをコネクテッド化する方針だ。

故障予知で稼働率向上

 特に期待されるコネクテッド機能が、「故障予知」「ダイナミックなルート探索」「自動運転(隊列走行)」の3つだ。

 故障予知は車両の稼働率向上に効く。いすゞのサービス「プレイズムコントラクト」は、「故障の約7割を占めるエンジンと変速機、排ガスの後処理装置の異常を検知できる」(同社担当者)。こうした部品は「一度故障すると修理に1日以上かかってしまう」が、故障を予知して入庫整備を促せば「稼働できない時間を2~3時間に抑えられる」という。

 ドイツ・ダイムラーグループなどに車載通信モジュールを供給する同ボッシュによると、パワートレーンだけでなく「ブレーキシステムやリチウムイオン電池、鉛蓄電池など幅広い部品の故障予知に対応できる」(ボッシュCVO事業室室長の西村直史氏)。電池などは走行環境やパターンで劣化の進行が大きく変わる。こうした要素もデータとして取り込み、予知の精度を高めているという。

「つながる技術」が
商用車に新しい価値を生む
車両データをクラウドに収集するアイデアは以前からあったが、車載通信モジュールやクラウドでの解析技術が整ったことで付加価値が生まれ始めた(写真提供=左:ボッシュ、右:ダイムラー)
車両データをクラウドに収集するアイデアは以前からあったが、車載通信モジュールやクラウドでの解析技術が整ったことで付加価値が生まれ始めた(写真提供=左:ボッシュ、右:ダイムラー)
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 需要と供給をリアルタイムにつなぐことも、コネクテッド機能の価値になる。ある輸送事業の運転者によると、「行きは荷物が満タンだが、帰りはカラで走っている」ことが少なくないという。この問題は、荷室や貨物の状態をモニタリングして空きスペースを「見える化」し、情報をクラウド上で共有することで解決できる。荷物の積載率を高めたい輸送事業者と荷物を送りたい人をマッチングするサービスを実現できる。

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