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動作パターンをAIが学習

 手首の筋肉を使った筋電義手を思い通りに動かすには、ある程度の訓練や慣れが必要だ。意識して機械を操るのではなく、もっと「直感的」に動かせれば多くの人に歓迎されるはず。こんな問題意識で開発に取り組むのが、電気通信大学の横井浩史教授だ。横浜国立大学などと共同で、AI(人工知能)を搭載した義手を開発している。

筋電義手が動く仕組み
(手首から先を失った人の場合)

 手の指を動かす筋肉は前腕に集中しており、「グー」「パー」などの形に指を曲げると特定の筋肉が動くのが観察できる。その際に発生する電気信号は、手の形や利用者に応じて特有の波長パターンとなる。この波長パターンをAIに分析させ、学習させる。

 利用者の前腕の筋肉にセンサーを装着して、義手と連動したタブレットを操作する。画面上の「グー」のボタンを押すと同時に、手がグーの形になるようイメージして筋肉を動かす。その時に発生した電気信号の波長をAIが分析する。その後は同じ要領で「パー」「親指だけ曲げる」など、日常生活で必要な手の動きを覚えさせていく。1~2分の作業で分析が完了する。あとは、「グー」や「パー」をするように筋肉を動かせば、事前に分析したパターンを感知し、その通りに義手が動く。

 波長パターンはセンサーの装着位置や体調で変動するため精度の向上が課題だ。一方、練習が少なくて済むため「小さな子どもでもすぐに使えるようになる」と電通大の横井教授は話す。

 電通大と横国大は今年4月、新型の筋電義手が厚生労働省の補装具として採択されたと発表した。3Dプリンターなどを活用して軽量化し、自費の場合でも50万円程度と安価に抑えた。「価格や重量で受け入れやすい義手を普及させたい」(電通大の横井教授)。今後はよりAIの学習スピードや精度を上げる開発に注力する。