植物油が生分解プラに変貌
前述の日本製紙と同様、三菱ケミカルにも食品メーカーなどからの引き合いが殺到。昨年5月にタイの合弁会社で年産2万トンの大型設備を稼働させ、生産能力を一気に5倍程度に引き上げた。現時点の生産コストは、ポリエチレンなどの汎用素材と比べて数倍高いという。だが「量産が進めば、石油由来プラより安くできる可能性もある」と、三菱ケミカルの藤森義啓サステイナブルリソース本部長は説明する。
●三菱ケミカルの生分解性プラスチック「バイオPBS」


肝心の生分解性についても今年、大きな進展があった。同社の実験では、紙片を海水に100日間漬けると約90%が分解してなくなるのに対し、従来のバイオPBSは50%弱だった。そこで、別の生分解プラを配合。紙の分解率に大幅に近づけることに成功し、「環境への影響をさらに抑えられた」(藤森氏)。
カネカが手掛ける生分解プラ「PHBH」も、環境対策の観点から有望視されている。同社が保有する微生物に大豆や菜種などの植物油を“食べさせる”と、体内でPHBHが生み出されるという。石油を一切使わず、微生物による分解率も高いのが特長だ。
同社は19年12月までに約25億円を投じ、高砂工業所(兵庫県)にある生産設備の能力を5倍の年産5000トンに引き上げる。さらに2~3年中に、海外の拠点で年産2万トンの大規模設備を稼働させる。武岡慶樹新規事業開発部長・常務執行役員は、「生産性の高い微生物を選抜し、培養や精製の装置も見直す。加工品を素早く成型できるように物性の改良も進めて、市場に浸透させたい。年産10万トン体制も視野に入れている」と意気込みを語る。
生分解プラはこれまで、価格の高さがネックとなり、なかなか普及しなかった。しかし、マイクロプラ問題がきっかけで「昨年から潮目が一変した」とカネカの武岡氏は話す。生分解プラの年間生産量は全世界で約90万トン。プラスチック全体の1%にも満たないが、今後大幅な伸びが期待できる。環境意識の高まりは、高機能製品で世界をリードする日本の素材産業にとって、強い追い風になりそうだ。
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