海を漂うプラスチックごみが、世界的な環境問題として注目されている。その解決策の一つとして脚光を浴びているのが、自然界で分解する新素材だ。高機能素材に強みを持つ日本にとって、新たなビジネスチャンスになると期待できる。
(日経ビジネス2018年10月15日号より転載)
紙なのに、水も空気もほとんど通さない──。そんな新素材を日本製紙が商品化した。表面に特殊加工を施した「シールドプラス」だ。
●生態系に悪影響を及ぼすプラスチック



一般的な紙の表面には無数の隙間があり、水蒸気や酸素が透過する。特殊な材料を厚さ十数マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルで塗布して「バリアコーティング層」を形成。微細な隙間を封じるのが特徴だ。
水分や酸素の影響で品質の劣化が進みやすい食品などの包装資材として使える。昨年11月に商品化した後も、バリア性能をさらに強化。2018年度中の採用を目指して、食品メーカーなどへの売り込みを強化している。
「湿気に特に敏感なポテトチップスの袋などの用途にも、紙が使えるようになる。食品や外食などの企業を中心に、引き合いは非常に強い」(パッケージング・コミュニケーションセンターの内村元一技術調査役)
世の中で幅広く使われているフィルム包装の代わりに、「紙」が活躍する場面が増えそうだ。内村氏は「デジタル化などで低迷する紙の需要を復活させる起爆剤になり得る」と力を込める。
シールドプラスが注目されている背景には、いわゆる「マイクロプラスチック」問題がある。
プラスチックは自然には分解されないため、環境中にいつまでも存在し続ける。海に流出したプラスチックごみは、何カ月も漂流しながら5mm以下の細かい破片になる。これがマイクロプラスチックだ。海の生物が餌と間違えて食べてしまうケースが世界各地で報告され、生態系への悪影響が懸念されている。微生物によって分解される紙であれば、そうした心配がない。
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