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 ロボット掃除機が家庭を飛び出し、オフィスビルなどで活躍し始めた。センサーやAIを駆使して、通行人や障害物を避けてゴミを的確に収集していく。深夜にロボットが働いてくれれば、人手不足に苦しむ清掃業界の救世主になりそうだ。

(日経ビジネス2018年10月1日号より転載)

4つのセンサーで 事前設定ルートを確実に
●パナソニック「RULO Pro(ルーロプロ)」の構造

 「お掃除をしています。道を空けていただけますか」

 女性の声に驚いて振り向いたが、視線の先に清掃員はいない。声の主はパソコンのマウスを巨大化させたような掃除機だ。慌てて進路を空けると、「ゴーッ」という吸引音を立てて掃除を再開。黄色い回転灯を光らせながら通り過ぎていった。

 下の写真は、パナソニックが7月に発売した「RULO Pro(ルーロプロ)」。オフィスビルの廊下などを無人で清掃する業務用ロボット掃除機だ。幅は59cmで高さは73cm、充電池も含めた重さは27kg。米アイロボットの「ルンバ」のような家庭用と比べ、サイズは一回りも二回りも大きい。吸引力や収集できるゴミの容量も上回っている。

 関連会社も含めパナソニックが業務用ロボット掃除機を本格的に手掛けるのは、約20年ぶり。電池性能や需要の限界から1990年代半ばに実用化を断念したが、「当時とは状況が全く異なる」と同社アプライアンス社の鯛多聞氏は話す。清掃業界の人手不足が深刻さを増しているからだ。

 清掃業者331社を対象とした業界団体のアンケートによると、66%が「人手不足が深刻化している」と回答、「深刻化する可能性が高い」との答えも32%に上った。深夜勤務が当たり前で定着率も低いため、省人化が急務だ。ここに商機を見いだし、パナソニックを含む多くのメーカーが業務用ロボット掃除機を相次ぎ投入している。

1時間で200m2を掃除

 ルーロプロの特徴は、事前にフロアの間取りや効率的な手順を覚え、ゴミの「取りこぼし」を防ぐことだ。下図のようにエレベーターホールを挟んで「H型」に通路が広がるフロアでは、掃除対象エリアを3つの長方形に分割。領域の端をぐるりと集塵し、内側を塗りつぶす要領で各エリアを掃除する。

●ルーロプロの掃除手順

 走行速度は壁際が秒速約30cm(時速約1.1km)、内側は同約50cm(同約1.8km)で、形状にもよるが1時間で約200m2を掃除できる。トイレなど進入禁止場所も設定できる。掃除が終われば、指定場所に戻って停止する。