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 全工程を自動化した無人倉庫、自動運転トラックによる無人配送、コールセンターの自動応対──。中国の流通業では様々な領域でAI(人工知能)の活用例が出始めている。主役はECのライバルであるアリババと京東だ。

(日経ビジネス2018年9月24日号より転載)

世界の物流プラットフォーマーへ名乗り

 欧米主要国のGDPに占める物流コストは7~9%なのに対し、中国は約15%だ。AIやビッグデータを活用したスマート物流で5%に引き下げるのが我々の目標だ。

 アリババは今後、 24時間で中国国内、72時間で全世界のあらゆるところへ配送できるインフラを整備する。そのために物流事業へ1000億元(約1兆7000億円)、足りなければ数千億元投資する。

物流事業への大規模投資を発表するアリババの馬会長(写真=アリババ集団提供)

 「中国の物流コストはGDP(国内総生産)の15%にも上る。AI(人工知能)やビッグデータなどの技術を使って比率を5%にできれば、中国の製造業に巨大な利潤の余地をもたらすことになる。これこそ菜鳥と物流業界が国家のために成し遂げるべきことだ」「菜鳥の望みは、24時間以内に中国全土へ、72時間以内に全世界へ荷物を届けられる体制を作ることだ」

 アリババ集団を率いる馬雲(ジャック・マー)会長は2018年5月31日、浙江省杭州市で開催された物流子会社、菜鳥網絡(ツァイニャオ)の5周年イベントでこう力説した。まるで政府高官が物流政策を語っているかのようだが、馬会長はそれを一民間企業の投資として実現させる、と宣言した。馬会長の言動から透けて見えるのは、破竹の勢いで成長を続ける中国IT大手が周辺領域へ進出。国家どころか世界のプラットフォーマーへと突き進む姿だ。

先行したのはライバルの京東

 物流への展開をいち早く進めたのはECのライバル、京東集団だった。アリババが外部の運送業者への委託が中心だったのに対し、京東は物流まで自社で手掛け、EC事業の成長とともに物流部門の業容を拡大してきた。