巨大な自然災害はインフラに大きな被害をもたらす半面、技術革新の契機となる。熊本地震で落橋した阿蘇大橋の架け替え工事では、一部の部材をあえて壊すことで橋の損傷を制御する。トンネル掘削工事では、施工者のノウハウを設計に反映して高速で施工する。

(日経ビジネス2018年8月27日号より転載)

壊れ方を決めて損傷を制御
●設計の想定を超える外力に備える
新しい阿蘇大橋の橋脚付近から橋台側を望む(写真=日経コンストラクション)

 深さ100mの渓谷の切り立った斜面。時折秒速10mを超える強風が吹き抜ける中で重機がせわしなく動き回り、橋脚基礎の建設が急ピッチで進む。国土交通省九州地方整備局熊本復興事務所が約60億円の工費をかけて整備する国道325号阿蘇大橋の架け替え工事の現場だ。2016年4月16日未明の本震で落橋した旧橋の約600m南側で、分断された南阿蘇村の中心部と熊本市方面をつなぐ。

 20年度の開通を目指す新しい阿蘇大橋(以下、新阿蘇大橋)。設計に当たって最も大きな課題となったのは、熊本県内を南西から北東に横切る布田川断層の存在だ。

橋と活断層が交差

断層が新阿蘇大橋と交差
●布田川断層と新しい架橋位置
布田川断層は国土地理院が作製した活断層図の位置を示す。国道57号の大分市方面は通行止めが続く
新しい阿蘇大橋のアプローチ部(写真=日経コンストラクション)
国土交通省による完成予想図(写真=日経コンストラクション)

 国土地理院が作成した活断層図によれば、布田川断層は新阿蘇大橋の南側で途切れる。一方、学識者らは現地調査の結果などから、断層がさらに北東まで続いて新阿蘇大橋と交差していると推定した。別のルートも検討したが、最終的には経済性や利便性、工期などを踏まえ、架橋位置をここに決めた。

 布田川断層は地震時に約1.4mの右横ずれが想定される。再び大きな地震が起これば、断層を挟んで立つ2つの橋脚が車道と直角方向に互いに離れる向きに動こうとする。橋げたでつながっているので全体が引きずられるように動いて落橋する恐れがあった。