物流倉庫の全自動化に立ちはだかるのが、箱や棚から商品を「ピックアップ」する作業だ。商品の種類を正確に識別し、壊れないように箱詰めする作業は、現状では人間に頼っている。画像認識やAI(人工知能)を駆使し、人手不足を克服する技術開発が熱を帯びる。

(日経ビジネス2018年8月20日号より転載)

 キャットフードと液体洗剤、歯磨き粉と洗濯ネット──。こんな組み合わせでEC(電子商取引)を利用したことはないだろうか。形状やサイズが全く異なる商品を、物流倉庫の隅々から集め、1つの段ボールに梱包して出荷するのは、実は非常に高度な作業だ。

 経済産業省によると、2017年の消費者向けEC市場は16年比9.1%増の16兆5000億円。荷物の個数が増加し、宅配ドライバーだけでなく、物流倉庫でも人手不足が顕著になりつつある。

 機械を使った自動化が対策の切り札であるのは間違いない。だが現状では、決まったサイズのパレットや段ボール箱を保管・搬送したり、コンベアに載せ替えたりする作業の自動化が主流だ。

 多種多様な商品を棚や箱から一つひとつ取り出す「ピッキング作業」は、現時点では人手に頼っている。ここをロボットで代替できれば大きなビジネスになると見て、国内外の様々なプレーヤーが技術開発を進めている。

 ユーザーとしてこの課題解決に本気で取り組むのが、米アマゾン・ドット・コムだ。17年に総額27万ドル(約3000万円)の賞金を用意し、「アマゾン・ロボティクス・チャレンジ」を開催。世界中の研究機関や大学を名古屋市に集め、箱の中にばらばらに入れた商品を、ロボットを使ってどれだけ素早く正確に「ピッキング」できるかを競わせた。優勝はオーストラリアのチームだったが、日本勢は三菱電機と東芝が健闘した。

 下の写真は三菱電機が開発したピッキングロボットだ。狙った商品を取り出す手順は大きく5つに分けられる。(1)まずはカメラで撮影して箱の中身を「見る」。(2)続いて、画像を分析して箱のどこに対象物があるか距離を「測り」(3)どの部分をどんな力で持ち上げればよいかを「判断する」。(4)そのうえで最適な「ハンドを選択」し(5)実際に物体を「移動」させる。

三菱電機
●2台のロボットでピッキングを実現
  • 見る自社製の3Dカメラで上から箱の中を撮影
  • 測る対象物が置かれている位置関係や向きなどを確認
  • 判断する対象物のどの部分をどの手法で持ち上げるか判断
  • ハンドを選択判断に基づき、つかむか吸着か、ハンドを選択
  • 移動対象物を取り出して、移動先の箱まで運ぶ
三菱電機のシステムは自社開発の小型の3Dカメラが強み(写真=行友 重治)
物流倉庫の作業は人手に頼る部分がまだ多い
●倉庫でのモノの流れと作業