印刷技術で大型化に目途

インクを使い印刷するように製造
●東芝のペロブスカイト型太陽電池のつくり方
❶インクを垂らす
金属製のアプリケーターにインクを垂らす。インクは表面張力で基板に付着する
❷表面張力を利用して塗る
付着した状態で、基板を動かす。表面張力で液体の状態が安定化し均一な膜ができる
❸熱して乾かす
150度以下の低温で乾燥させて完成。分割して、それぞれを太陽電池として使う

 この課題に「印刷技術」の応用で挑むのが東芝だ。上の図のように、「アプリケーター」と呼ぶ金属棒と基板を平行に設置し、ペロブスカイトを含むインク状の液体を垂らす。液体が金属棒と基板の双方に付着している間に基板を動かす。表面張力で液体の状態が安定しているため、液体を均一に塗布できるという。技術者の力量に左右されにくいのも利点だ。

 東芝とNEDOは今年6月、703cm²と大型でありながら変換効率11.7%のペロブスカイト型太陽電池モジュールを開発したと発表した。東芝研究開発センタートランスデューサ技術ラボラトリーの天野昌朗主任研究員は、「長年培ってきた印刷技術を生かした。昨年と比べて面積を30倍近くに増やした一方で、発電効率は落ちなかった」と話す。実用化の目安となる900cm²まであと一歩だ。

 もう一つのハードルは「製品寿命の短さ」だ。ペロブスカイト型は熱や湿気に弱く、シリコン型に比べて耐用年数が短い。

 パナソニックは、「ペロブスカイト構造の不安定さ」が耐久性を左右すると考え、最適な材料組成を研究している。新材料を加えて16年、高温多湿の環境で実験したところ、発電効率は実験前の95%を維持できたという。その後も開発を進めている。

 従来型の太陽電池は、海外メーカーの攻勢で、価格競争が激化している。国内ではメガソーラーなど大規模導入が一巡し、今後はビルや住宅の窓など小口の需要開拓が課題になる。薄くて軽く、コスト競争力に優れるペロブスカイト型をいち早く実用化できた企業には、大きなビジネスチャンスが広がることになる。

 ペロブスカイト型太陽電池は、宮坂氏らによって10年ほど前に発表されたものの、「あまりにも革新的だったからか海外の研究者の方が関心を持った。国内での研究が本格化したのはここ数年」(宮坂氏)という。日本発の技術をどう開花させるかという観点でも、ペロブスカイト型太陽電池は一つの試金石になりそうだ。