未利用の農業用水は40万km

 マイクロ水力発電の特徴は大きく3つある。

 1つ目は、旧来の水力発電と比べて発電可能場所が格段に増えることだ。環境省と厚生労働省が16年にまとめた調査によると、全国の水道施設のうち小規模な水力発電が可能な候補地は563カ所あった。導入すれば、年間で50億円以上の売電収入が見込めるとの試算もある。

 導入対象は水道管だけではない。工場の排水設備や農業用水など、これまで見捨てられていた水流も有望だ。DK-Powerの松浦社長は「農林水産省の調査では、日本には農業用水だけで40万km、地球10周分もあるのに、水力発電ではほぼ未利用。導入余地が大きい」と説明する。

 当然ながらダムなどに比べると流水の量と勢いは落ちるため、出力は限られる。例えば東京電力HDが持つ水力発電所には100万kWを超えるものもあるが、マイクロ水力発電の規模はその1万分の1程度にすぎない。だが規模が小さいことは、新参メーカーにとっては好機となる。発電機の小型化などで特徴を出せるからだ。

流水のエネルギーを使い、電気を取り出している
●マイクロ水力発電の基本的な仕組み

 マイクロ水力発電の仕組みは、風車や火力発電所用タービンとほぼ同じ。河川や水道管などを流れる水を水車の羽根で受けて、回転エネルギーに変換する。この力で発電機内部のコイルを回転させると、「電磁誘導」の原理で電気が発生する。重要になるのが、摩擦や抵抗などのロスを抑制して、効率的にエネルギーを取り出すことだ。

●マイクロ水力発電の導入例
ベアリング製造で培った滑らかに回転する仕組みや流体力学を用いた解析技術を活用した

 ここに着目したのが、ベアリングメーカーのNTNだ。同社は昨年9月に東京電力HDと提携。茨城県の用水路に実証用の小型水車を設置した。

●マイクロ水力発電の導入例
ベアリング製造で培った滑らかに回転する仕組みや流体力学を用いた解析技術を活用した

 NTNの強みは、同じ水路に複数台の水車を直列に設置できることだ。水車に水が当たると渦が生じて流れが乱れてしまい、後ろの水車はうまく力を受けることが難しい。NTNは流体力学を用いて羽根の形状を工夫。先端を折り曲げたり、一部を肉厚にしたりして独自の形状を編み出し、後ろで水流が乱れにくいようにした。

 水車1台が生み出せる出力は1kWと小さいが、「ちりも積もれば山となる」ように、出力の低さを数でカバーする戦略だ。「設置価格は150万円と安いため、6~8年ほどで回収できる」と、NTNの石川浩二執行役員は説明する。