景気の流れが今後、どう変わっていくのか? 先行きを占うのはなかなか難しい。だが、予兆はどこかに必ず現れてくるもの。その小さな変化を見逃さず、確かな情報をキャッチし、いかに分析して将来に備えるか? 著名エコノミストの上野泰也氏が独自の視点と勘所を披露しながら、経済の行く末を読み解いていく。
シリーズ
上野泰也のエコノミック・ソナー

340回
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引き上げラッシュの初任給、上げ幅は適正か
人材獲得のために賃上げを惜しまない企業が増えている。大卒新入社員の初任給に関しては、約7割もの企業が初任給を上げると答えた調査もある。将来の労働力人口の減少も見据えて、若年労働者の奪い合いは今後激化するだろう。だが足元の…
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金融資産を持つ高齢者に「貯蓄から投資」を勧められない理由
岸田文雄内閣が資産倍増計画を打ち出す中で、「貯蓄から投資へ」というスローガンを目にする機会が多くなった。金融資産のうち、比率が半分を超えている「現金・預金」を「株式など」「投資信託」へと振り向けるよう促すのが基本コンセプ…
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植田新総裁の発言から予測する、次の日銀の一手
植田和男・新日銀総裁の就任時の記者会見からは「新体制では緩和策の修正を急がない」というメッセージが感じられた。マイナス金利、イールドカーブ・コントロールといった、これまでの緩和政策は今後どれくらいの期間をかけて見直されて…
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2023年満額回答の春闘、問われる賃上げトレンドの持続性
世の中の推移を見ていると、その時代特有の「空気」のようなものが流れることがある。そしてそれは政策担当者や企業経営者の行動にも影響を与える。資源高・円安などが原因のコスト増を販売価格に転嫁する「値上げラッシュ」や、23年の…
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信用不安高まる金融市場、利上げ中の中央銀行が取るべき行動は
金利と量の両面から米連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めに動く中、金融システムに「きしみ」が生じている。米国のシリコンバレーバンク(SVB)破綻に端を発する複数の米銀行の経営破綻はその象徴だろう。これを機に金融市場で高…
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日銀新体制が政策修正に動くと、長期金利はどこまで上昇するか?
4月9日に植田和男氏が第32代の日銀総裁に就任し、日銀新体制が発足する。マイナス金利解除、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール;YCC)の修正・撤廃に向けてどう動くか一挙手一投足が注目される。YCCの修正に向けては…
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マイナス金利解除は?植田和男、次期⽇銀総裁の胸の内を読み解く
政府は2月14日、次期日銀総裁候補を植田和男氏(元日銀審議委員)とする人事案を、衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。春に発足する植田新体制は、長きにわたる金融緩和の出口戦略をどう探っていくだろうか。早いタイミングで…
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米FRBは利下げに向けて動くか? 今年最大の注目点を考える
今年の内外経済に大きな影響を及ぼしそうなのが、米国の中央銀行である米連邦準備理事会(FRB)の金融政策運営。中でも市場関係者が注目しているのが、2022年中に利上げを停止し、利下げに向けた動きがみられるかという話題だ。そ…
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長期金利の上限引き上げ、日銀はなぜ12月に「パンドラの箱」を開けたのか
黒田東彦総裁の任期満了となる3月までは、目立った動きはないだろうと見られていた日銀が、昨年12月20日の金融政策決定会合で突然、長期金利の上限引き上げを決め、市場は大きく揺れた。なぜ日銀はこのタイミングで政策修正に走った…
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2023年の日本経済が「低空飛行を維持しつつ徐々に悪化」する理由
2023年の日本経済はどうなるだろうか。人口減・少子高齢化という中長期的な課題を抱えているため、大きく成長することはないが、大きく下振れする動きも起こりそうにない。経済協力開発機構(OECD)が毎月発表している「景気先行…
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利上げ、ウクライナ侵攻、日銀ショック 金融市場の2022年総まくり
2022年はロシアのウクライナ侵攻、インフレ進行に伴う米国の急ピッチな利上げなど、金融市場を賑わす出来事が多かった。日本でも為替の円安や日銀の政策転換が市場を動かした。年内最後の同連載は、サプライズが相次ぎ金融市場が振り…
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手詰まりの金融緩和、「賃上げ3%」に活路見出す黒田総裁
企業の次期日銀総裁に対する要望は、金融緩和政策の維持・拡大が、引き締めを上回る。これは日銀にとっても都合がよく「賃金が上昇しやすい環境が整うまで粘り強く金融緩和を続ける」というのが、日銀の緩和継続の理由に据えられつつある…
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軍事費増強急ぐ世界、消える「平和の配当」
ロシアがウクライナ紛争で核兵器の使用をちらつかせたり、北朝鮮が核・ミサイル戦力を着々と強化させたりする動きが顕在化した2022年。「核兵器というのは実際は使われない兵器」という世界の認識が少しずつ崩れ始めている。米欧を中…
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「適正水準」見失う急変続きの円相場、日本が取れる対策は
今年の円相場の値幅は過去に例を見ない大きなものとなっている。為替相場の急変動で、円相場は「適正水準」を見失ってしまった。今後は米金融政策の先行きの利下げへの転換を予想しながら、円相場は反対方向の円高へ振れるだろうが、米国…
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見えてきた米利上げの終着点、5%超えの可能性はあるか
急ピッチで利上げを進める米FRB(連邦準備理事会)だが、市場では早くも利上げの到達点、いわゆる「ターミナルレート」が意識され始めている。インフレ圧力をしっかりと封じ込めるべく、ターミナルレートは昨年以降、徐々に引き上げら…
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対抗策なき米利上げの「巻き添え被害」、FRBに配慮はないのか
米国の急速な金融引き締め策の弊害が世界のあちこちに波及し、世界経済がさらに悪化するリスクが高まっている。金融市場も不安定かつ過敏な状態に陥っており、市場流動性の低下が懸念される。「世界の中央銀行」米国の配慮を期待したいと…
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インフレ対策にこだわる欧州中銀、ハイペース利上げは正解か
世界的にインフレが問題になる中、各国政府は対応に苦慮している。中でも欧州は、コロナ禍で進行した供給制約によるインフレに加えて、ロシア軍のウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇の影響を大きく受けており、事態は深刻だ。「物価…
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こんなに違う世界の物価高対策、ベストプラクティスはあるか
ロシアによるウクライナ侵攻の長期化でエネルギー価格の上昇が止まらないなど、物価高は天井知らずの気配を見せる。エネルギー需要が高まる冬場を前に、欧州連合(EU)各国や日本では、さらなる対策が求められている。価格決定の方法を…
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世界経済をかく乱する、経済理論無視の「わがまま政治家」
このところ、経済の一般常識に反する経済政策に固執する政治家、リーダーが世界のあちこちで散見される。トルコのエルドアン大統領やロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席と、その数は枚挙にいとまがない。彼らの独善的な行動が…
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米利下げ転換は2023年後半か、過去のインターバルから考える
現在、市場関係者の間で最も関心を集めているのが、FRB(米連邦準備理事会)の利上げ路線の転換がいつ訪れるかということ。過去の利上げ終了から利下げ開始までの期間をたどればそのヒントが見えてくる。もちろん、インターバルの長短…
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菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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1000年企業の肖像
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グルメサイトという幻
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この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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