日本、そして世界の金融を読み解くコラム。筆者はいわゆる金融商品の先駆けであるデリバティブズの日本導入と、世界での市場作りにいどんだ最初の世代の日本人。2008年7月に出版した『投資銀行バブルの終焉 サブプライム問題のメカニズム』で、サブプライムローン問題を予言した。理屈だけでない、現場を見た筆者ならではの金融時評。
シリーズ
倉都康行の世界金融時評

完結
16回
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新興国化し始めた先進国
新興国市場への投資にはカントリー・リスク分析が最重要であり、内外環境が政治経済に与える影響を詳細に調査する作業が不可欠となるが、今日の先進国市場も、確かにそれに似てきたと言えそうだ。
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イエレン気流とトランプ乱流
減税に対する投資家の期待感は半端ではない。さらに共和党主流派が画策する「国境調整」案には大統領も理解を示しており、米国企業の輸出増に寄与するとして市場の強気派を喜ばせている。だがこの国境調整は大変な曲者だ。
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拡散するブレグジット・リスク
金融市場の最大の関心事はトランプ大統領の政策だが、同大統領に関しては、弾劾リスクを指摘する声が増えている。仮にロシア関連文書の存在が明るみに出れば、「弾劾裁判やむなし」とのムードが生まれる可能性は高い。
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2017年のカギを握る米国長期金利と米中関係
2017年の日本経済や金融市場はどんな展開になるだろうか、と考える時、多く人がトランプ次期米大統領の政策の影響を真っ先に思い浮かべるだろう。このユーフォリアは意外に長期化する可能性がある、と筆者は考えている。
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「トランプ・ダラー」はどこへ行く
トランプ次期大統領の経済戦略をレーガン時代のそれになぞらえる向きが増えている。市場は減税や財政支出拡大への期待一色で、金利上昇やドル高が米国経済に逆風になるといった懸念は忘れてしまったかのようだ。
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貴重なポンドの教訓
金融市場には「ブレクジット・リスクはもはや過去の話」として切り捨てようとする動きさえあったが、10月7日に起きた「ポンドの大暴落」は、ブレクジットへの恐怖感がいまだに消えていないことを想起させるに十分だった。
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市場を荒らす中央銀行
戦後の国際金融市場では常に「市場荒らし」の存在が注目され、その行動が資本主義にとっての厄介なリスク要因とされてきた。今日、中国や英国、地政学リスクのほかに「市場荒らし要因」となっているのが中央銀行だ。
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「国民への視座」を失い始めた金融政策
ジャクソンホールでのシンポジウムでイエレン議長の講演が行われる前日、同じホテルでFRBの利上げ姿勢に反対するグループがフィッシャー副議長らFOMC主要メンバーと面談するという、異例のミーティングがセッティングされた。
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欧米市場に潜伏する4つの金融リスク
7月は米国市場でのダウが9連騰して最高値を更新。日経平均もポケモンGO効果で大きく切り返した。株式市場だけを見ていると世界景気は上向いたかのような錯覚を受けるが、脆弱なポイントが幾つか浮かんでくる。
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金融街シティでは失業者10万人超えも
英国のEU離脱で、金融街シティへの影響は失業者が10万人ともいわれるほど。大手金融機関が大陸に拠点を移せば、それだけでは済まない。2008年の金融危機がその源流にある。
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再浮上する1930年代との相似性
世界的な低成長は自由貿易を通じた「グローバルな現象」となっている。トランプ氏が米国民にアピールするのも自然だ。1930年代との相似性は、反グローバリゼーションや保護主義化、通貨切り下げ競争の側面で生き残っている。
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潜在的危機を前に弾を打ち尽くす日本
インフレなき時代の経済課題を突き詰めれば、完全雇用と一人当たりGDPの向上なのではないか。政府や日銀が「失業を無くそう」「国民の生活水準を上げよう」といったスローガンを掲げたならば誰も文句を言わないだろう。
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2016年度「ドル円100円割れ」の可能性
今後の米国の金融政策を読むには、ひとまず金融当局が発する「ノイズ」から離れて、実体経済のデータに目を向けた方が良さそうだ。筆者が注目する観察対象は、インフレ率と労働生産性である。
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時代は「ニュー・アブノーマル」へ
「ニュー・アブノーマル」の時代に入ったといわれる世界経済。処方箋は財政出動なのかもしれないし、ヘリコプター出動なのかもしれない。将来像は見えないが「ニュー・ノーマル時代の正論」の出番はなさそうだ。
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原油安が暴いた「市場の黙示録」
年初来の株価急落は、原油安を媒介として噴き出した金融政策の残滓に他ならない。つまり、量的緩和という異形の金融政策が持ち上げたリスク資産の価値修正過程を、世界中のプロが読み損なったのだ。
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2016年に忍び寄る「ドル高変曲点」
2016年を迎え、市場は新たなリスク要因の吟味を始めようとしている。一般論としては、米国がどこまで金利を引き上げるのかに注目が集まりそうだが、筆者自身はこの点をそれほど警戒していない。
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