「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。
Focus 20
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明

249回
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彼女が中止のホイッスルを吹く日
東京五輪・パラリンピックを中止する権限は、たぶん、誰も持っていない。しかしながら、誰であれ、五輪の開催に反対して自分の地位を捨てることはできる。この決断は、バカにならない。
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「一人メシ推奨国民運動」はなぜ嫌われる
どうしてお国は、飲食店にばかり時短営業を求めて、客の側の飲食店利用のあり方を制限する措置をとらないのだろうか。店舗に対して午後8時なり9時なりでの閉店を求めることよりも、客に対して多人数での会食の自粛を強く促したほうが、…
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昭和の笑いはおおらかだったのか
昨今の笑いを批評する人たちが、脊髄反射的に持ち出す話として「昭和の笑いはおおらかだった」「いまの笑いは残酷ないじめ中心だけど、昭和の笑いは罪がなかった」という感じの述懐がある。しかし、事実は違う。昭和の笑いも、それはそれ…
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告発する人間を異端視する世界
今回は、この1週間ほどに相次いで発覚した3つの炎上案件をひとまとめに扱うことで、出来事に共通の背景を与えている「気分」に迫りたいと思っている。個人的には、個々の事件の個別の影響よりも、事件が相次いで報じられたことがもたら…
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宣言解除に神風は吹くのだろうか
菅義偉首相は、17日の夜、記者団に向けて、首都圏の1都3県に出されている緊急事態宣言を、再延長後の期限通り、3月21日限りで解除する方針を明らかにした。私は、今回の宣言解除は、桜の開花と無縁ではないと考えている。
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汚れてしまった「絆」という日本語
東日本大震災から10年の節目を迎えて、テレビの画面や新聞の紙面には、震災回顧の企画が並んでいる。似たようなトーンの番組に食傷する一方で、10年という時間的な尺度の有効さを、あらためて思い知らされている。今回は、卑近な日常…
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「反語」に出世の武器を見る
最近気になった言葉といえば、菅義偉首相が、先日の司会者抜きの「ぶら下がりスタイルの記者会見」の中で、しきりに繰り返していた「……ではないでしょうか?」という語尾だ。反語を持ち出す人間は、一見質問に見える言葉とは裏腹な回答…
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われら日本人は義理と人情を踏みにじることができるのか
菅義偉首相の長男(菅正剛氏)を起点とする、総務官僚への一連の接待攻勢が政治問題化しているが、ここでは、とりあえず、本筋の贈収賄の話はおあずけにしておく。官僚ならびに政治家がしたがうべき職業倫理のお話にも踏み込まない。当欄…
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「数」の力を妄信する人々
愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)に向けた署名集めをめぐって、奇妙な事実や不可思議な背景が漏れてきている。2日ほど前、現今の事態をからかう替え歌ツイートを投稿したところ、大きな反響があった。反響の大きさには、幾人…
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デパートが消え行く時代に
先週の土曜日に隣町のデパートに行ってきた。隣町のデパートとは、埼玉県川口市にある「そごう川口店」を指す。昨年のいつ頃だったか、その川口そごうが2021年の2月いっぱいで閉店するというニュースを伝え聞いて以来、ずっと気にな…
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森氏が五輪組織委トップに祭り上げられる理由
森さんのあの発言は、どこからどう見ても不適切かつ不穏当なもので、擁護できる余地はひとっかけらもありゃしないのである。それゆえ、当稿では、この点をめぐる議論も省略する。当欄では、どうして森さんのような人物が五輪組織委のトッ…
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訥弁は忖度を生み、詩は思考を呼ぶ
海の向こうで、若い詩人が自作の詩を朗読してから一週間ほどが経過した頃、わが国では、内閣総理大臣が、「最終的には生活保護がある」という国会答弁を開陳して市井の善男善女を驚かせている。
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ワクチン担当大臣が「ブロック」すべき相手
菅義偉首相がワクチン接種を進める調整役として河野太郎大臣に白羽の矢を立てた理由は、彼の「発信力」と「突破力」に期待しているからだということらしい。私個人は、むしろ、河野大臣の「発信力」と「突破力」に懸念を抱いている。無駄…
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無敵化する「インフルエンサー」たち
ツイッターの様子がこの一週間ほどおかしい。世間の炎上ネタや事件の報道を反映しながら、日々プラットフォームとしての仕様を千変万化させ続けてきたそのツイッターが、私の目には、トランプ支持者による連邦議会占拠事件の勃発からこっ…
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「群れる者は狂う」という結論
今回は成人式についてのお話を書くことにする。こじつければだが、このテーマは、奥深いところで、アメリカで起きている出来事とつながっている。というのも、私が成人式を扱うにあたって想定している結論は、「群れる者は狂う」というこ…
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まだまだやります、2021年新春吉例いろは歌留多
新年あけましておめでとうございます。小田嶋さんのいろは歌留多、2021年の元旦にお届けいたします。
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来年が凡庸で退屈な一年でありますように
今年の当欄の更新は今回で最後だ。なるべくなら明るい話題で2020年を締めくくりたかったのだが、諸般の事情から、どうやらそういうわけにもいかない。今回は、新型コロナウイルスを軽視する論陣を張っている人々をあえてテーマとして…
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セレブに寛容すぎる21世紀の日本人
とある化粧品会社の経営者が、自社のオンラインショップのサイト上で、差別発言を拡散している。経営者個人の内面に潜んでいるその差別感情を、自社サイトの中で公式な形で表明するのは異例のことだし、それ以上に、企業の広報なり役員会…
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「ライター」をめぐる事件簿
今回も例によってライター受難の話だ。この2日ほど、ツイッター上でやりとりされている情報を総合するに、なんでも「Cakes」というWeb媒体上に掲載される予定だったとあるライターの連載コーナーが、編集部からの一方的な通告に…
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「喧嘩両成敗」にはご用心
この何日かネット上で話題になっているナイキのCMは、すでにご覧になっただろうか。この動画を見て何を感じるのかは、人それぞれだろう。私は、とても感心した。今回は、件のナイキのCMへの反響からうかがえるわが国の抑圧の構造につ…
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徹底予測2021年 底打ちか奈落か
日本経済の節目の年として幕を開けた2020年は、誰もが予想できない最悪の1年となった。すべての始まりはコロナ禍だ…
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クルマ大転換 CASE時代の新秩序
総付加価値額が450兆円ともされる自動車産業の構造が変わり始めた。GAFAやEVスタートアップ、ソニーなどが新た…
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不屈の路程
話題の経営者や気鋭の起業家はいかにして自らの経営を確立するに至ったのか。そこにたどり着くまでの道のりは決して順風…
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菅野泰夫のズームイン・ズームアウト欧州経済
ロシアを足掛かりに、欧州経済・金融市場の調査を担当して、既に十数年の月日がたちました。英国の欧州連合(EU)離脱…
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1000年企業の肖像
日本は創業100年以上の企業が多くあり、世界一の長寿企業大国として知られる。その中には創業1000年を超えると伝…
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10 Questions
いま、世の中で起こっていること。誰もが知りたいと思っていること。でも、ちゃんと理解できていないこと。漠然と知って…
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河合薫の新・社会の輪 上司と部下の力学
上司と部下が、職場でいい人間関係を築けるかどうか。それは、日常のコミュニケーションにかかっている。このコラムでは…
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ファクトフルネス思考
「データを基に世界を正しく見る習慣」を紹介した書籍『ファクトフルネス』は、日本で90万部を超えるベストセラーとな…
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大西孝弘の「遠くて近き日本と欧州」
日本の読者にとって欧州のニュースは遠い国々の出来事に映るかもしれない。しかし、少子高齢化や低成長に悩み、企業の新…
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グルメサイトという幻
食べログ、ぐるなび、ホットペッパーグルメ──。外食店探しに欠かせない存在となったグルメサイトの地位が揺らいでいる…
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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える
この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつか…
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コロナ禍の混乱からいち早く抜け出したファーストリテイリング。破綻が相次ぐアパレル業界にあって、なぜユニクロだけが…
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テスラが仕掛ける電池戦争
日本でも2030年代半ばに新車販売でガソリン車をゼロにする方針が打ち出されるなど、各国の環境規制強化により普及段…
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70歳定年 あなたを待ち受ける天国と地獄
従業員の希望に応じて70歳まで働く場を確保することを企業の努力義務として定めた、改正高齢者雇用安定法が2021年…
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