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豚骨ラーメンに欠かせない「辛子高菜」が全国的に不足している。筑後地方など一大生産地で、原料の高菜の栽培量が激減しているためだ。危機感を強めた高菜産地のJAみなみ筑後では生産増に向けた取り組みを始める。

(日経ビジネス2018年9月10日号より転載)

[JAみなみ筑後代表理事組合長]
乗富 幸雄氏

1951年福岡県みやま市生まれ。高菜農家に育ち、JA全農ふくれん(全国農業協同組合連合会福岡県本部)勤務を経て、2014年から現職。高菜はJAみなみ筑後のある筑後地方や阿蘇地方が産地として有名。ほとんどが漬物に使われる。

SUMMARY

高菜不足の概要

全国的に高菜を使った漬物が不足しており、豚骨ラーメン屋などで提供を控えるところが出てきている。不足の原因は、高菜栽培を手掛ける農家が次々と離れていっているためだ。重労働にもかかわらず見合う収入が得られないという。皮肉にも高菜チャーハンの普及など高菜のニーズが拡大しており、品不足に拍車がかかっている。

 今年の5月ごろ、豚骨ラーメンのトッピングとして有名な辛子高菜が全国的に不足していることが報道されました。原材料である「高菜」が豚骨ラーメンだけでなく、おにぎりの具やパスタなどに用途が広がり、需要が伸びているためです。しかし、本当の原因はその需要に反比例するように生産量が激減していることにあります。

 高菜の一大生産地の一つが福岡県の南端に位置する筑後地方です。そこにある我々JAみなみ筑後(南筑後農業協同組合)も十分な量を供給できておりません。2003年の年間出荷量は816トンでしたが、年々減少し、18年はわずか69トンしかありませんでした。

 「ニーズがあるのならば、たくさん作ればいいじゃないか」「機械化や人材確保などJAとしてやるべきことをやってこなかったのではないか」という声もいただきます。普通に考えればその通りで、辛子高菜など好んで食べてくださっている方にご迷惑をおかけして申し訳ない気持ちです。

 しかし一方で、高菜産業には、機械化にせよ人材確保にせよ一筋縄ではいかない事情があります。今後どうするかを含め、この点について詳しくご説明したいと思います。

重労働で実入り少ない

 高菜を増産するどころか、毎年の生産量が落ちている大きな原因の一つは、生産が重労働だということです。高菜は辛子高菜など漬物に使われることがほとんどですので、丸ごとの高菜そのものを見たことがある人は少ないと思います。白菜のように地面から葉を広げて生えます。1株は大きいものだと1m近くにもなります。

 機械では収穫できないので、1個ずつ身をかがめて鎌で切り取る必要があります。老齢の農家の方も多いのでこれはかなりキツイ作業です。

 収穫した高菜は一定期間、高いところに干しておきます。高菜は1つ数kgと重いので、運んで持ち上げて干す作業も重労働になります。

 重労働に見合う価格で売れればいいのですが、高菜の販売価格は他の作物と比較すると安い。これも生産量が減っていく原因です。