固定資産税を払う必要がない建物に対して、29年間にわたり誤って課税を続けた。 誤課税に気づいた後も、還付すべき時期と金額を当初、見誤った。町長は「民法上の規定があることを知らなかった」と認める。

(日経ビジネス2018年8月27日号より転載)

[福井県若狭町長]
森下 裕氏

1948年生まれ。若狭農林高校卒業。福井県の旧上中町産業課長、同企画課長などを経て、2005年に旧三方町との合併で生まれた若狭町の初代助役に就任。同町の副町長を経て、09年から現職を務める。

SUMMARY

29年間続いた課税ミスの概要

福井県の若狭町が非課税対象である組合の家屋に対して29年間、固定資産税を課税していたことが判明。対象になったのは、町内の中小企業でつくる組合の建物とみられる。還付の金額は約1858万円。29年分の誤課税のうち、地方税法、民法のどちらの規定にも当てはまらない9年分は返還されない。同町は町長の給料の10%を1カ月減給するなどした。

 福井県の若狭町は、町内にある非課税の家屋に29年間、誤って固定資産税を課税し続けていました。還付に当たっても指摘を2回受け、還付の金額は加算金を含めて最終的に約1858万円となりました。私は町長として、事態を重く受け止めています。

民法の規定を知らなかった

 家屋を所有するのは、地方税法に規定された組合であるため本来、家屋には税金がかかりません。家屋は1987年に建てられており、組合が事務所として使ってきました。

 若狭町は組合名や建物の詳細などについて公表していません。固定資産税の誤った課税は、建物ができて間もない88年度から始まりました。そして最近まで気づかないまま課税を続けてきました。

 最初に誤りを知ったのは、組合から受けた連絡がきっかけでした。2017年3月に「非課税なのではないか」という問い合わせがあったのです。

 調査したところ、確かに指摘通り町が誤った課税をしてきたことが判明しました。このためまず、組合に対して謝罪。そのうえで、こうした場合に5年分の還付を定めた地方税法の規定に従い、12〜16年度の5年分の固定資産税と加算金、合わせて約264万円を17年4月に還付しました。

 町としては、この段階で還付があったことについて公表しませんでした。このため、後になって「なぜこのときにマスコミに知らせなかったのか」と指摘を受けました。

 しかしながら、公表しなかったのは「ミスを隠そう」とする意図があったからではありません。地方税法以外の規定に基づいて、より長い期間の誤課税を還付する可能性があることを知らなかったのです。

 組合の申し出に対して、町の税務住民課長が自らの裁量によって予算で認められた範囲で対応したのはこのためです。同じ理由によって、私にはこの還付についての報告や相談、連絡などがありませんでした。

 事態が変わったのは今年3月に入ってからです。きっかけはこの組合から再び問い合わせを受けたことでした。

 福井県内のほかの自治体でやはり長期間にわたる課税の誤りが発覚。2月に民法上の規定によって返還するという報道がありました。組合からの2回目の問い合わせは、この報道が契機になった、と聞いています。

 「5年を超える分についても還付できるのではないか」「民法には還付できるとあるのだが、実際はどうなのか」という申し出を聞いたとき、私は事態をすぐに把握できませんでした。このため「どういうことなのか」と思いました。