留学生アルバイトの雇用に絡み、労働時間超過などの問題が発覚した。本社の家宅捜索や吉冨学社長の書類送検など、ブランドイメージを損なう事態に陥った。吉冨社長は「故意性はなかった」と訴える。

(日経ビジネス2018年8月20日号より転載)

[一蘭 代表取締役社長]
吉冨 学氏

1964年、北九州市生まれ。88年、第一経済大学(現日本経済大学)卒業。派遣業などいくつかの事業を立ち上げた後、行きつけのラーメン店の屋号を引き継ぐ形で93年、とんこつラーメン店の「一蘭」を設立する。

SUMMARY

一蘭の外国人雇用問題の概要

大阪府警は昨年11月、外国人の雇用をハローワークに届け出る義務を怠った容疑で、一蘭の本社や道頓堀店(大阪市)を家宅捜索した。さらに今年3月には、留学生を法律で定められている「週28時間」を超えて勤務させていた入管難民法違反の容疑も加え、吉冨学社長や同店の店長ら計7人と、法人としての一蘭を書類送検した。

 大阪府警から家宅捜索を受けたという報告を聞いた時、「まさかうちの会社が。何かの間違いではないか」と信じられない思いでした。しかし、現実には、間違いを犯していたのは私たちの方でした。留学生は週28時間という枠内でアルバイトなど「資格外活動」をすることが認められています。一蘭の道頓堀店(大阪市)に勤務していた10人の留学生がこの28時間を超過していました。また、同店での外国人12人の採用について、雇用対策法上の届け出義務を怠っていました。

 幸いお客様の来店は減っていませんが、一蘭のブランドイメージが傷ついたことは間違いありません。これはひとえに社長である私の責任です。もっと綿密なコンプライアンス対策が必要でした。

注意を呼びかけていたが…

 一部の報道では、一蘭側が容疑を認めたと伝えられています。確かに、事実として違反はありました。ただ、留学生の超過労働については、故意性は一貫して否認しています。そのため、今回の案件について、社内処分は一切下していません。辞表を出すと言ってきた本社の労務担当者も、超過労働を指摘された留学生アルバイトも、卒業した人などを除いて引き続き勤務してもらっています。

 一蘭では毎月の店長会議で週28時間の規定に注意するよう度々呼びかけていました。家宅捜索を受けた後、全国の約70店舗で同様の事案がないかチェックをしましたが、問題が見つかったのは道頓堀店だけでした。店長の店舗間での人事異動も頻繁にあるため、道頓堀店だけが不正が起きやすい運営になっていたわけでもありません。

 実際、道頓堀店の店長も違法労働を防止することを強く意識していました。しかし、10人の留学生の中には、府警に指摘された容疑の期間、「学校が長期休暇中だ」と店長に申請している人もいました。入管難民法では、長期休暇中は週40時間までの勤務を認めています。このため、店長は留学生の申請を疑うことなく、40時間以内の勤務をさせたのです。しかし、実際には長期休暇中ではなかったため、違法労働となってしまいました。

 留学生が通う語学学校では、学生によって長期休暇を取る時期が違うことがあります。店側からアルバイトの留学生が学校側に本当に長期休暇か確かめようとしても、プライバシーの保護を理由に断られてしまうこともあります。店長は、一般の大学の夏休みや冬休みの時期以外に留学生から長期休暇の申し出があっても、申請が本当か確かめるのが難しかったのです。

 もっとも、10人の留学生に責任を押し付けるわけでもありません。彼らは、普段の勤務態度も非常によかった。道頓堀店は来店客の約9割が中国人や台湾人などの外国人観光客ですが、彼らはその対応に大きく貢献してくれていました。