何が悪かったのか。百町物語として何かできることはなかったのか。反省点はいくつかあります。一つは駐車場の確保が十分にできなかったことです。

 アンリの客足に陰りが出始めたころ、近隣の県から自動車で来られるお客様から「行きたいけど駐車場が不便」という声が上がっていました。地元顧客を中心にしたアーケード商店街ですから、もともと駐車場は充実しているとは言えません。ですが、新たに駐車スペースを作ろうにも、店のすぐそばには適した土地が見つかりませんでした。

 また、商店街として、アンリまでお客様の動線もうまく作ることができませんでした。

 アンリはご存じの通り、有名デパートや銀座の路面店など人通りのある場所に多く出店されています。それに対し、なかまち商店街はお恥ずかしいですがそう人通りは多くありません。集客のために看板を出したり宣伝をする手もあったかもしれませんが、アンリは広告よりもブランド力で勝負する方針のお店なので、そう簡単にはいきません。

 さらに経費面での商店街による支援も限界がありました。アンリの店舗は百町物語が貸していまして、2年目以降は、家賃を約半額に減額するなどの手を打ちました。本当に撤退を防ぎたかったら、もっと値引きしてもよかったのではと思われるかもしれませんが、この店舗は別にオーナーがいる転貸しで、これ以上の値引きは難しかった。

 アンリさんはこの店舗にかなりの投資をしてくださってもいました。単にケーキを売るだけでなく、店内での製造設備が充実していて恐らく数千万円単位の費用をかけてくださっていたと思います。それだけの意欲を持って出店してくださっていただけに撤退はとても残念です。同時に3年間頑張ってくださり、大変感謝もしています。

4月末で撤退したアンリ・シャルパンティエの店舗があった場所。今後は、地域と連携し新しい活用法を探っていく

産学連携と地元顧客に活路

 今回の一件によって、私たちはこれまでの活性化策自体も大きく見直すことにしました。今回、最も痛感したのは、有名店を誘致しそのブランド力に頼る方法は大きな威力がありますが、持続性には難がある、という点です。同じ戦略を続け、仮にどこかのタイミングで有名店を誘致できたとしても、アンリと同様の結末になる可能性を否定できません。

 他力本願ではなく、自分たちの力で自分たちの街を輝かせよう──。そんな反省の下、新しい方針では、学生らや子育て世代など「地元の若い世代」に働きかけることを柱にしました。

 具体的には、まず、周辺の高校などとタイアップしてお店を運営してもらいたいと思っています。例えば、湖南農業高校の学生が作った野菜を大津商業高校の学生が仕入れて、新鮮な地場の野菜を商店街で販売するモデルです。今年の秋ごろからトライアルで店舗を出してもらう計画を進めています。

 また、大津は京都や大阪への通勤も便利なことから、大津駅前を中心に大型マンションの建設が進んでおり、子育て世代が増えています。そこで、製菓・製パンや幼児教育の学科を設置する滋賀短期大学と連携し、子育て世代のママさん向けに様々な仕掛けをしていくことも考えています。

 まずは、滋賀短期大学の先生や学生の方が指南役になり、ママ向けのパン教室をやってみたり、パンを販売したり、幼児教育のプログラムを提供したりする予定です。ゆくゆくは店舗の経営にもつながるかもしれません。

 高齢者だけでなく、学生の方や子育て世代でにぎわう商店街になるよう引き続き工夫していきます。