市街地再生の切り札として誘致した有力店舗が4月末で、商店街から撤退。地元活性化を目的に専門の会社まで作り奮闘してきたが、方針の転換を余儀なくされた。学生や子育て世代などの若者を呼び込む施策を新たに策定し、再起をかける。

(日経ビジネス2018年8月6日・13日号より転載)

[百町物語専務]
尾中克行氏

1950年滋賀県生まれ。2015年からボランティアで商店街活性化に携わり、16年から現職。なかまち商店街に限らず大津市は、滋賀県の県庁所在地でありながら、15年に西友、17年にパルコなど有力店の撤退が続いている。

SUMMARY

有名洋菓子店撤退の概要

空き店舗が目立つシャッター商店街となっていた「なかまち商店街」を復興させようと、有名和菓子店「叶匠寿庵」の会長ら大津市の地元有名企業が共同で町おこし会社を設立。活性化策の一つとして有名店舗の誘致を企画し、芦屋の老舗洋菓子店の出店を成功させた。しかし、採算面の問題からか、その洋菓子店が2018年4月末で撤退してしまった。

 私が専務を務める「百町物語」は、滋賀県の大津市中心部の活性化を目的として2015年に設立された町興しを専門とする会社です。特になかまち商店街(菱屋町、丸屋町、長等の3商店街で構成)を盛り上げようと、地元の老舗和菓子店「叶匠寿庵」の会長だった芝田清邦氏が発起人になり、滋賀銀行など地元企業が出資し誕生しました。

 商店街活性化の目玉にしていたのが、有名店の誘致でした。いくつか誘致した中でもシンボル的な存在だったのが、数多くのデパートに出店している芦屋の老舗洋菓子店「アンリ・シャルパンティエ」(以下アンリ)でした。

 ところが、15年4月から営業していただいたこのアンリは18年4月末をもって撤退されました。ご愛顧してくださっていたお客様も多く、期待を裏切ってしまったことを深くおわび申し上げます。

 重要な柱ともいえる店舗を失って商店街活性化の方向性を見直さざるを得ません。日本中どの地方でもシャッター商店街が多く、活性化に頭を悩ませている関係者の方は少なくないと思います。実務は社長ではなく専務の私が取り仕切っていましたので、我々の経緯と今後の方向性を私の方から詳しくお話しさせていただきます。

期待の店舗、当初は好調も…

 なかまち商店街はJR大津駅から近く、大津市の中心市街地として国から認定を受けた地域にある商店街ですが、少子高齢化の影響もあって店舗の閉店が相次ぎ、年々さびれていました。行政だけに任せておけないと、百町物語が設立されました。商店街活性化の方法として中核に掲げたのが「全国有名店の誘致」でした。

 有名店の誘致では、シュゼット・ホールディングス(兵庫県西宮市)が運営するアンリや京都の有名和食店、大津駅前にあった土産物屋の名店街、地元で有名なステーキハウスなどにお声掛けし、15年4月には4店が開店しました。

 中でも、アンリは全国的な知名度も高く、話題性もあり、休みの日には行列ができるなどかなり盛況でした。その集客効果で商店街の他の店に立ち寄るお客様も増え、当初は狙い通りの状況が続きました。アンリさんも恐らく黒字だったと思います。

 事態が変わってきたのは2年目からでした。1年目は常時お客様が入っており商店街の目玉になっていただいていた同店が、「いつも満員、行列」という感じではなくなってきたのです。結局、18年2月、4月末で閉店したいとの申し出がありました。引き止めはしましたが、決定を覆すことはできませんでした。