各地域を統括する部長は、被害者に対し、本来の条件を満たさない案件に融資するなどして、事件のもみ消しを図った

 このような内々に問題を処理する文化が次第に根付き、不正に激怒したお客様にも部長は本来条件を充足していない融資を実行するなどして、事件をもみ消していました。

 月間の融資目標を達成するための「浮き貸し」行為も横行していました。月末になると職員が特に親しいお客様の元に駆け込み、数日間の融資契約を頼み込む。利息は支店長らがポケットマネーから出していました。

 汗もかかず、知恵も出さない。誰の役に立つわけでもない。こんな融資に価値はありません。そういう指導をしてきたはずなのに、その思いは伝わっていませんでした。

 第三者委員会からは「理事会も関与した組織的な隠蔽ではない」という結論が出ました。しかし、性善説に頼り過ぎ、透明化された経営体制をつくれていなかった私に一番の責任があることは言うまでもありません。

 鹿児島相互信金は、今回の事件まで金融庁から大きな改善命令を受けたことはなく、以前は他の金融機関から不正防止の対策を視察に来られる方もいました。これまで私が不正防止の3本の矢として掲げていたのは、支店長の業務監査、週1回の会議での法令順守の確認、支店長による月1回の職員個人へのヒアリングでした。特に、個人へのヒアリングは、職員の誕生日にケーキを買って自宅へ訪問し、ご家族とも健康状態や帰宅時刻について話し合うなど、徹底していました。

 十分なシステムを作り上げたと自負していましたが、実際には形骸化していたことが、今回の調査で分かりました。ヒアリングは職員の健康状態や私生活まで踏み込むことはほとんどなく、業務目標の達成に関する話題に終始していたのです。

 着服を防ぐため、生活費に困窮する職員に融資をする制度も、機能していませんでした。同制度では、通常の審査では融資が通らない可能性があるため、審査課を通さずに、人事課経由で理事長決裁としていました。スムーズに融資を実行するための措置でしたが、かえってあだとなりました。

 というのも、審査課の調査がないため、制度利用者が他の金融機関からも借りて多重債務の状態にあることに気づけなかったのです。また、人事評価への影響を危惧して制度をそもそも利用しない職員も多くいました。

 既に様々な再発防止策が動き始めています。積み金の担当職員にはタブレット端末を持ち歩かせ、現金を受け取ったその場で入金作業を終わらせる仕組みにしました。融資の目標設定も、月初めに各支店内の資金需要の状況を聞き取りすることにしました。

 ただ、これまでの不正防止策が機能しなかったように、どんな仕組みにも穴はあります。結局、一番重要なのは職員への教育です。

同じ不正を繰り返さない

 お客様は温かい言葉をかけてくれていますが、それに甘えていてはいけません。一般の方々が我々のぶざまな不正をどれだけ厳しい目で見ているか。まるで警察官が泥棒を働くようなものです。同じ不正を繰り返せば、本人はおろか家族も白い目で見られ、鹿児島で仕事をすることはできなくなる。口酸っぱく職員にこう言い聞かせています。

 私は今後約1年で再発防止策のめどをつけて、退任することを決めました。私とともにこれまで会社を支えてくれた副理事長や専務理事は今年6月の総代会で退任しました。

 信金中央金庫から迎え入れた新しい理事と、常務理事を務めていた役員が新たな鹿児島相互信金を背負っていきます。超地域密着・超顧客密着という特色は維持しつつ、顧客に甘えず高い倫理観を持った組織を実現してほしいと思います。