検査工程の不正が発覚した、コスモエネルギーホールディングス傘下の丸善石油化学。工数不足が常態化し、検査員が自己の判断で検査を省くなどしていた。鍋島勝社長は「現場の声を拾い上げることができなかった」と反省の弁を述べる。

(日経ビジネス2018年7月9日号より転載)

[丸善石油化学社長]
鍋島 勝氏

1958年生まれ。富山大学大学院工学研究科を修了後、丸善石油(現コスモ石油)に。87年、同社から分離した丸善石油化学に転籍。2009年より執行役員、12年に取締役。16年には代表取締役専務に就任。17年6月より現職。

SUMMARY

丸善石油品質不正の概要

今年2月、コスモエネルギーホールディングス子会社の丸善石油化学で、検査工程の不正が発覚。プロピレンやトルエンなど24種類の化学製品について、所定の検査を勝手に省いたり、検査結果を偽造していたことが判明した。不正が見つかった製品は同社の出荷量の3割程度にまで相当し、問題製品の出荷先は130社に上った。

 当社の商流は上流に位置しているため、サプライチェーンが非常に長くなっています。直接・間接を問わず、多くの企業に対し、当社の製品の影響への懸念を抱かせてしまう結果となってしまい、大変申し訳ないと考えております。当社事業が社会全体に与える影響度を改めて自覚し、関係する全ての方々の信頼を取り戻すべく、全社一丸で再発防止策に取り組んでいます。

 当社はコスモエネルギーホールディングス傘下にあるコスモ石油の前身の一つ、丸善石油から石油化学部門が分離・独立し、1959年に誕生しました。コスモ石油との資本的なつながりは独立後も続き、2016年にはコスモHDの連結子会社となりました。ただ、コスモHDは今年1月まで不正について認識することはありませんでした。

 グループ内で共通規定の整備や倫理研修も実施してきましたが、品質管理に関しては共通点が少なく、それぞれ独自の管理をしてきたという経緯があります。対象製品も検査項目も少ない石油製品に比べ、当社の取り扱う化学製品は多岐にわたっています。コスモHDとしても、今回の不正を受けて、一層のコンプライアンス徹底とガバナンス改善を図る方針となっています。

 当社の検査担当者は、必要性に疑いを抱いていた一部の検査工程を顧客に断りなく省いていました。工程分析や技術的見地に基づいて、担当者は「納入仕様書に定められた試験をしなくても品質上問題はない」と身勝手な解釈をしていました。

顧客目線の考え方が欠落

 しかし、その試験項目は発注側にとっては重要な意味があるかもしれません。そんな顧客目線の考え方が当社には欠けていました。現在、検査担当者に検査の意義や必要性について重点的に教育を進めています。

 一方、今回の不正について顧客からは、不必要な試験項目は双方のために無くすべきだとの指摘も受けています。こうしたすり合わせがこれまでできていなかったことは、営業部門を含む会社全体において、顧客本位の品質管理という観点が欠けていたためだと考えています。検査担当者への教育の取り組みは今後、全社に展開し、顧客の目線に立って価値を創造する意識を醸成しなければいけません。

 こうした不適切行為は、検査業務を担当する品質管理課内で完結し、経営層まで問題が共有されることはありませんでした。検査業務は特殊な知見が必要であること、 物理的に他部署から離れていたことなどから、孤立しやすい傾向にありました。