「カレーラムネ」などユニークな炭酸飲料で有名な木村飲料で、期待の新商品の出荷停止が起こった。 コーラに八丁味噌の名称を使ったところ、国のGI制度に抵触してしまったためだった。 製品名を変更して販売を再開できたが、木村英文社長は制度を問題視。飲食品業界に警鐘を鳴らす。

(日経ビジネス2018年7月2日号より転載)

[木村飲料社長]
木村英文氏

1956年静岡県生まれ。静岡大学卒業後、79年に家業である静岡県島田市の木村飲料に入社。99年から3代目の社長に就任。「カレーラムネ」や「わさびらむね」など、特徴ある炭酸飲料の開発を強みにしている。

SUMMARY

新商品コーラ出荷停止の概要

2018年2月から販売を開始した「八丁味噌コーラ」が出荷停止になった。使用していた味噌は老舗の「まるや八丁味噌」製だったが、同社製の八丁味噌が農林水産省が定めたGI制度で採用されておらず、八丁味噌をコーラの名称に使えないことが判明したためだった。知名度の低いGI制度のあおりを受けた形だが、4月に名称を変えて販売を再開した。

 当社は静岡県で炭酸飲料メーカーを営んでいます。変わり種の「カレーラムネ」や静岡緑茶を使った「しずおかコーラ」など、ユニークな食材やご当地の名産を使ったサイダーやコーラを商品化してきました。神社で祈祷をしていただき、「転ばない=合格する」という縁起物として受験生に人気の「必勝ダルマサイダー」など工夫をこらした商品も出しています。

 そんな中、今年の2月23日に新作として、愛知県岡崎市にある創業延元2年(1337年)の老舗「まるや八丁味噌」の八丁味噌を使用した「八丁味噌コーラ」の販売を開始しました。

 しかし「八丁味噌」という商標に問題が発生していることが分かり、2月末で出荷を停止しました。現在は「岡崎味噌コーラ」として名称を変えて販売を再開していますが、新作を楽しみにしてくださっていたファンの皆様に混乱を招いてしまいました。申し訳ありませんでした。

 「八丁味噌コーラ」は本物の八丁味噌を使っていたのになぜ名称に問題が発生し、出荷停止になったのか。これは農林水産省が定めたGI制度(地理的表示保護制度)が関係しています。

 各地域の名産を商品名に使った商品は世の中にごまんとありますが、当社と同じような目に遭う可能性があります。飲料品や食品メーカーのみなさまがそのような状況にならないように、経緯を含めて詳しくお話しします。

重要商品だった八丁味噌コーラ

 当社は中小企業ですから、全国に販売網を持つ大手飲料メーカーにはかないません。そこで差別化を図るために、特に本社がある静岡県という「ご当地」でしか飲めない炭酸飲料にこだわってきました。富士山サイダーや桜えびサイダーなどは静岡県外から来られた方が高速道路のサービスエリアや地元のお土産物店で、「珍しいから飲んでみよう」「お土産に買って帰ろう」と購入してくださいます。これで「炭酸飲料は夏以外は売れない」という飲料メーカーの常識から外れ、年中売れるようになりました。毎年2月には新作の飲料を出しますが、ご当地商品として受け入れられる炭酸飲料を出せるかどうかに社運がかかっているともいえます。

 今回発表した八丁味噌を使ったコーラはその中でも特に大きい意味がありました。ラベルデザインからも分かるように徳川家康をイメージしています。これまでの木村飲料の本社がある静岡県だけでなく、販売地域を拡大し、家康にゆかりのある愛知県でも販売できるようにという思いを込めた商品でした。

コーラの名称を「八丁味噌コーラ」(左)から「岡崎味噌コーラ」(右)に変更した