スマートフォンの中古市場の掘り起こしを目指し、従来にない即時入金システムによる買い取りサービスを始めたが……(写真はイメージ/朝日新聞社)

 詐欺が増えてそれを見破れなければ、振り込んだ金額はそのまま損失となってしまいます。我々は買い取った商品を再販しても20%ほどしか利益が残りません。数十の正常な取引で得た利益が、数件の詐欺で吹き飛びます。

 そのうち、査定申し込みの内容が明らかに疑わしい案件も増えてきました。例えば、同じ世帯に住む夫婦から何台も最新のスマートフォンを買い取ってほしいという申し込みがありました。しかもすべて新品の状態というのです。一般家庭に何台も新品の不要なスマートフォンがあるというのがそもそもおかしい。詐欺行為である確率は非常に高いと言えます。

 そういう分かりやすい虚偽申告だけならよいのですが、巧妙なものも多い。買い取り金額を下げ、全体のリスクを引き下げることも考えましたが、そうすると競争力が落ちてしまいます。

 そもそも私が即時入金サービスを考えたのは、以前からある在宅型の買い取りシステムに疑問を持っていたからです。消費者から商品をまず送っていただいてから査定をし買い取り金額を提示します。買い取りの目安金額は送付前にお伝えすることが一般的ですが、到着後の査定で安くなることが多々あります。「もう商品を送ったしその金額でもよいか」と半ばあきらめながら了承している人が多いのです。

 すべての業者とは申しませんが、一部の業者では1円でも安く買い取るようにとの方針を裏で打ち出しています。企業からすると利益率を高めるために必要なことでしょうが、ユーザーからすると納得がいかないでしょう。この慣習を変えたかったのです。

 買い取り件数が大幅に増えれば詐欺の割合と影響が小さくなり、「即時入金」の仕組みを変えずとも事業の存続は可能なのかもしれません。スマートフォンの新品市場は年間3000万台ほどありますが、携帯電話販売店に下取りを依頼する人は25%程度とされています。眠っている端末を売ってもらうように喚起していけば、いずれは買い取り台数を増やせると思います。しかし、宣伝広告費もかかるうえ、事業規模の拡大には時間もかかります。

高価買い取りにシフト

 詐欺の割合が高い状態でサービスをどう維持するのか、はたまた撤退するのか、決断を迫られました。最終的に選んだのが、即時入金方式をやめることでした。今後は、サービス名などは変えずに、商品が届いてから入金するようにします。このやり方でも、期待値よりも低い金額で買い取られることに対する消費者の不満を解消すること自体はできると思っています。

 今後は、どこよりも高く買い取ることに注力していきます。消費者は即金よりも高価格での買い取りの方を望んでいると判断しました。数世代前のiPhoneでも高く買い取っていますので注目を集め始めており、引き続き軌道に乗せていく考えです。

 それにしても、れっきとした犯罪であるにもかかわらず数万円のために詐欺を働く人がいるとは思いませんでした。被害額は回収できるように警察にも相談しています。

 とはいえ、損失は出ましたが、後悔していません。我々は創業4年目のスタートアップ企業です。今回、事業が想定外の事態に見舞われた際の対応を経験できたことはよい学びだったと思います。