協力の輪を多国間に

 三つめは、これまで培ってきた、日米以外の国とのヒューマンネットワークが花を咲かせたことです。実は、陸上自衛隊は2002年から、人道支援/災害救助活動などにおける多国間協力をテーマにしたアジア太平洋地域多国間協力プログラム(MACP)を開催しています。大規模災害が起きた時の多国間調整のあり方などについて議論を続けてきました。

 そして、この時、まさに13カ国からなる多国間調整所を設置することになりました。参加したのはフィリピンのほか、日米、オーストラリア、ニュージーランド、ブルネイ、インドネシア、マレーシア、韓国、英国、スペイン、カナダ、イスラエルの各国です。

 幸いなことに、多国間調整所に姿を現した日米、カナダ、フィリピン、英国のメンバーはMACPの参加者だったのです。MACPにおけるこれまでの議論の中で調整メカニズムのテンプレートを共有していたため、調整作業をスムーズに進めることができました。

中国の台頭を背景に、アジアで多国間安全保障体制を築くべきとの議論があります。災害対応を通じて築いた多国間調整のメカニズムが、有事の際に役に立つようになるかもしれないですね。

 トモダチ作戦では、素早い動員が日米同盟の力を証明することになりました。フィリピンでの活動においても同様のことがあったのでしょうか。海上自衛隊の空母型護衛艦「いせ」に、米軍の垂直離着陸輸送機「オスプレイ」を搭載して臨んだと聞いています。

笠松:そうですね。これには現地を不安定な状態にしない効果が期待できました。

大きな災害が起き、現地政府の機能が麻痺すると、その空白を突こうとして、反政府勢力などが活動を活発化させることが想定されます。そうした事態を招かないよう、すぐ近くに日米が存在していることを示すシンボルというわけですね。

笠松:おっしゃる通りです。

人道支援/災害救助活動における日米の協力は、今後どのように発展させていくでしょうか。

笠松:大きく三つの方向に進化させていく考えです。一つは、第三国に対する能力構築支援です。2012年度以降、東ティモール、カンボジア、ベトナム、モンゴル、インドネシアに対して、人道支援/災害救助活動の能力を高めるための支援を提供しています。例えば東ティモールでは車両整備技術の教育を、カンボジアでは道路構築の教育を行ないました。

 二つめは日米にオーストラリアを加えた3カ国間の協力を強化することです。2013年に陸上自衛隊と米太平洋陸軍、米太平洋海兵隊、豪陸軍のトップが集まり、「人道支援/災害救助活動」と「能力構築支援事業に関する情報共有」などについて協力していくことを盛り込んだ共同声明を発表しました。

 三つめは、2010年に創設された拡大ASEAN国防相会議(ADMM+)における秩序作りに貢献することです。会議には五つのワーキンググループ(WG)があります。日本は2013年、防衛医学のWGでシンガポールとともに共同議長を務めました。この活動の中で、大規模災害が発生した時の防衛医学における各国の協力のあり方について検証するため、机上演習や実動演習を行いました。実動演習には18カ国から3100人が参加しました。さらに2014年からは、人道支援/災害救助活動のWGにおいて、ラオスと共同議長国を務めています。

 ADMM+において日米は直接的な協力はしていませんが、ここでも日米が連携していくことが重要だと考えています。

仙台空港復旧プロジェクトに携わった自衛隊、米軍、空港関係者の面々(笠松誠・西部方面総監部情報部長提供)
傍白

 「トモダチ作戦」――取りようによっては、偽善の響きを持つネーミングだ。国益のためには相手が誰であれ厳しい態度に出る米国が、単に友情で行動するわけがない。このように捉える向きは多いにちがいない。しかし、日米間に友情が全くなかったと考えるのも間違いだろう。笠松誠・西部方面総監部情報部長が披露してくれた教え子のエピソードからは、日本人と米国人が交流し語り合ってきた基盤があり、それがあったからこそ、被災者の心情に思いを馳せた行動を米兵が取ったことがうかがわれる。この友情に対して、心からお礼を申し上げたいと思う。

 この友情を、日本はアジアの国々との間にさらに広げていくことを考えねばならない。そうすることが、危機に瀕した人たちの生命と生活を救うことはもちろん、国と国との関係を深めること、そして日本自身の安全保障の強化にもつながる。

 最後にもう一つ、エピソードを紹介しよう。仙台空港のオペレーションから数カ月後経った2011年夏、コゼニスキー大佐は米国に帰国することになった。同大佐は笠松・西部方面総監部情報部長に「帰る前に、やりたいことがある」と語った。それは、民航機で仙台空港に降り立つこと。それが震災復興のシンボルだからだ。同大佐は、この夢を実現して米国へと去っていった。

■変更履歴
記事掲載当初、5ページ目で「輸送機C-130の航続距離は400キロ」としていました。正しくは「輸送機C-130の航続距離は4000キロ」です。お詫びして訂正します。[2015/3/10 10:40]
1ページ目で「復旧には半年はかかるだろう考えました」としていました。正しくは「復旧には半年はかかるだろうと考えました」です。お詫びして訂正します。[2015/3/11 15:30]
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