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2015年3月6日に公開した記事を再掲載しました。

 人間の運命は無数の変数に乱舞し続けるもの。誰ひとり例外なく、ひと時たりとも留まることの許されない流転の中にあります。けれども、戦後日本で、これほどまでに多くの人の運命が収斂した瞬間はなかったかもしれません。2011年3月11日14時46分18.1秒。その変数にさらされた「わたし」という定数それぞれの「いま/ここ」を訪ねます。

 第1回は、被災地で飼い主の見つからない犬や猫を施設から預かり、里親を見つける活動を実践する女優の杉本彩さんを訪ねました。

(聞き手は日野なおみ)

杉本 彩(すぎもと・あや)
女優、動物愛護活動家、ダンサー、小説家、実業家。1968年京都生まれ。87年、東レ水着キャンペーンガールでデビュー。バラエティー番組「ウリナリ」(NTV系)に出演し、芸能人社交ダンス部メンバーとして多くの大会に出場、入賞を果たす。2004年公開の映画「花と蛇」で主演女優を務める。公益財団法人動物環境・福祉協会Evaの理事長として、動物愛護の活動にも積極的に取り組む(撮影:竹井 俊晴、ほかも同じ)

3.11以降、被災地で飼い主の見つからない犬や猫を施設から預かり、里親を見つける活動を実践しています。ご自身も被災して飼い主の見つからない猫を引き取ったと聞きます。どのような経緯で保護活動を始めたのでしょうか。

杉本彩氏(以下、杉本):きっかけは、震災が起こってから数カ月後のことでした。確か震災から2カ月経った頃、宮城県に救援物資を届け、現地を視察する予定を立てていました。

 ちょうどその時、個人のボランティアの方から相談を受けたんです。「骨組みだけ残された家で、たくさんの猫を保護している。民間や行政などの引き取ってくれるところにも預けたけれど、どこも収容頭数オーバーで、引き受けてくれない猫が6匹いる」と。私が長らく動物保護活動を続けていることをご存知だったのでしょう。

 ご連絡をいただいたボランティアの方は、猫を宮城県で保護しているということでした。ちょうど支援物資を宮城県に届ける予定がありましたから、「それじゃあ」とお会いする約束をしたんです。たまたまタイミング良く、私の自宅も会社も保護動物を里親に出したばかりで、ご相談を受けた頭数分、引き受けることができました。そこで引き受けましょうと宮城県でボランティアの方と落ち合い、その場で引き受けてきました。

何頭くらい引き取ったのでしょうか。

杉本:その方が保護している猫6匹と、施設から預かった猫1匹の計7匹でした。

 ただ、その後大変なことが発覚します。メス猫がみんな妊娠していたんですね。地方ではまだ、不妊去勢手術があまり浸透していません。そんな環境で春を超えて放置されていたものですから、メス猫は次々に妊娠していった。

 みるみるうちにお腹が大きくなって。これは産ませるしかないと判断しました。預かった7匹の猫のうち、メス猫の4匹が次々に出産したんです。当時は親猫と子猫を合わせて、20頭以上の猫たちの面倒を見なくてはなりませんでした。

 生後3カ月まではお渡しできないので、ほ乳瓶でミルクをあげたり、離乳食を与えたり。会社でも自宅でも預かっていましたからもう大変でした。何とか数カ月間の子育てを終え、子猫たちは全て里親にもらっていただくことができました。

 ただ、子猫は比較的早く、手を挙げてくれる人がいらしたので助かったのですが、親猫の多くは私が引き取りました。やはり大人になると、なかなか里親を探すのも難しいんですね。ですから今は、被災地から来た子を4匹、うちの子として面倒を見ています。

被災した動物が抱える強いトラウマ

杉本さんはこれまでにもたくさんの犬や猫を保護しています。被災した動物たちは、これまで保護した動物たちと、何か違いはありましたか。

杉本:津波に流され、外で生活していましたから、まあみんな、どろどろに汚れていました。ただ、こうした外見上の問題はきれいにしてあげれば解決します。それよりも深刻だったのは動物たちの心の問題です。

 3.11は、「地震」「津波」という現象を理解している人間にとっても、言葉にできない恐ろしい体験でした。動物たちは、そうした現象を理解できるはずもなく経験したのです。その恐怖たるやなかったはずです。ですから、保護した当初はどの子も凄く怯えていたんですね。

 目が怯えていて、心を閉ざしていた。激しいトラウマを持っていることはすぐに分かりました。

 それも震災で保護された子たちは、もともと野良犬や野良猫ではなく、家庭で飼われていた子たちでしょう。それなのに、いきなり家を失い、飼い主や家族を失った。突然、奪われてしまったんです。そして、ご飯も食べられない状況になっていた…。

動物たちの抱えたトラウマはその後、癒えていったのでしょうか。

杉本:安心できる環境が整えば、どんどん変わっていきます。「あ、この子、こういう子だったんだ」と、世話をしている私自身も驚くほど変わっていきました。本来の性格が見えてくるんですね。

 精神的にも落ちついて、安定していきます。もちろん人間と同じように個体差がありますから、改善されるペースは全然違っています。けれどみんな、時が経つにつれて、少しずつ表情が柔らかくなっていくんです。

 象徴的なのは寝ている時の姿でしょうね。心を許したように無防備な状態で眠るようになる。それまではずっと体を固くして、部屋の隅っこで身動きしないことが続いていましたから。

 これまで保護してきた子たちは、一旦、施設に預けられていました。ワンクッションあるわけですね。もちろん、それぞれの子がトラウマを抱えていますが、それでも隅っこにいて体を硬くすることは稀でした。それくらい、震災で心に傷を負ったのでしょう。

突然奪われた、日だまりのひなたぼっこ

被災地から引き取った猫のうち、1匹は飼い主が見つかったと聞きます。

杉本:私も驚きました。あるバラエティー番組で自宅を撮っている時、被災地で預かった猫の月子がふっと通ったんです。それで「この子、被災地から来た子なんですよ」と紹介したんです。

 すると、たまたまその子の飼い主さんが番組を録画していらして。その後、お手紙をいただいたんです。

バラエティー番組を通して、元の飼い主が見つかった月子

 月子の飼い主の方はご高齢で、震災によって生活の場も変わられた。手紙には月子…元はまりこちゃんという名前でしたが、「まりこを引き取ることはできないんですけれど」と書かれてありました。ですから「私が面倒を見ますので安心してください」とお伝えしました。

 月子がその方の猫だと確信したのは、飼い主さんがお手紙に書かれていらした特徴が、あまりに月子と合致したんです。それも月子が保護されていたのは、その飼い主さんが暮らしていた隣町でした。津波で流されたことは間違いないと確信しました。

杉本さんだからこそできる飼い主の探し方ですね。

杉本:テレビを介して見つかることなんて、なかなかありません。飼い主の方も録画した番組を何度も繰り返し見たそうです。そして「間違いない」と思われたようです。

 ですから今は、必ず毎年、月子の写真入りのお葉書をお送りして、状況をお伝えしています。

飼い主さんはとても安心したことでしょう。

杉本:お手紙を読んで、飼い主の方と月子の、幸せで穏やかな日々が本当に突然奪われてしまったんだと実感しました。縁側で月子と一緒にひなたぼっこをしたり…。そんな幸せな日常が奪われた。お手紙を読んだ時は本当に胸に詰まるものがありました。

 飼い主さんが、どれだけ月子のことを心配されていたことか。津波によって月子がいなくなって、生きているんだか、死んでいるんだかも分からない。もし生きていたら、ひもじい思いをしているんじゃないか。心底心配していた様子が、お手紙でも伝わってきました。

 その子が、うちで幸せに暮らしていると分かって、本当に安心されたと思うんです。

7匹の猫を預かった後も被災地での動物保護活動を続けていらっしゃいます。

杉本:そこから先は、私のブログ(「杉本彩のBeautyブログ」)が掲示板のようになっていきました。保護動物の情報などを掲載するのにとにかく使ってください、と。

震災以降、保護動物の情報交換の場となったブログ「杉本彩のBeautyブログ

 私が保護した子たちも全てどこかに飼い主さんがいらっしゃるはずです。ですから、猫たちの紹介をブログにアップしていきました。けれどなかなか反応がなくて…。ブログで発信したことによって見つかることは結局ありませんでした。

 また私自身、改めて何ができるのかということを真剣に考えました。私は仕事の都合でしょっちゅう被災地に行けるわけではありません。何ができるのかと考え、2011年11月には「東北復興支援 動物愛護チャリティーライブ&ラテンナイト」を主催しました。2日間、色々な趣向でイベントを展開して、集まった419万8903円を緊急災害時動物救援本部に寄付しました。

 当時は耳を傾けて動いてくれる方も多くいらしたんですね。けれど震災から4年が経ち、お手伝いするボランティアの方がどんどん減っているのも事実です。

里親の見つからないペットは今もたくさんいる

今もまだ、被災地で里親の見つからない犬や猫はいるのでしょうか。

杉本:たくさんいます。飼い主が見つからない子もいれば、たとえ飼い主が分かっていても、飼い主の方が引き取る状況まで生活が安定していないこともあります。

 例えば、新しく入った復興住宅がペットOKでないこともあります。家が狭くなったり、金銭的にペットを飼える余裕がなくなったり…。

 事情はさまざまですが、引き取れる状況でない人がたくさんいるわけです。飼い主がいるけれど引き取れる状況でないという子たちは、東北だけでなく、東京にもたくさん来ています。

 つまり、まだ終わっていないんです。被災地に行くと分かりますが本当に何も解決していません。東京にいるとつい、もう終わったことのように誤解してしまうかもしれませんが、実態は決して終わってはいません。

被災した保護動物に、私たちができることは何でしょう。

杉本:まずは被災地の現状を知ってもらうことがすごく大切だと思っています。

 現地のボランティア団体や個人のボランティアの方が、どういった活動をしているのか知っていただきたいですね。ホームページやブログを見ればそうした活動はすぐに分かりますから。

 知ったうえで、自分に何ができるのかをみなさんに考えていただきたい。例えば寄付などの金銭的なサポートをしたり、もし時間も体力もあるなら現地に行って手伝ったり。何より身近な人に、この状況を語ってくれるだけでも風化されずに済むと思っています。

京都、神戸まで保護犬を届けに行く

ペットを新たに迎える際、ペットショップに行くのではなく、被災地にいる保護動物の里親になる。こうした行動を取る人が増えるだけでも状況は変わりそうですね。

杉本:その通りです。私も、新しいわんちゃんやネコちゃんを迎えたいという話を聞いたら、すぐさま、東北のお付き合いのある愛護団体に連絡をして、「こういった子が希望なんだけれども」と話しています。

 希望に合う子がいれば、私自身が東北に伺って引き受けてくることもあります。新しい飼い主さんが、京都や神戸の人だと、私が全てコーディネートをして、その方のところに連れて行き、契約書をお渡しして、注意点などを説明して…。全て自分で、責任を持って里親さんに引き渡しています。やはり東北のボランティア団体の方が関西まで行くのは難しいですから。

 私が東北まで引き受けに行くこともあれば、東北から東京まで連れてきてもらって、その先は私が関西まで連れて行くこともあります。

 状況によってその都度やり方は違いますが、少しでも東北で新しい家族を待つ子たちが幸せになってくれればと思っています。小さなことかもしれないけれど、こうした小さなことをやってくれる方がたくさんいらっしゃれば、それは大きな動きになるはずです。

 お渡しする瞬間は、私自身も感動するんです。

 私のちょっとした行動によって、わんちゃんや猫ちゃんが、新しい家族を得てこんなに幸せになる。里親になる方もみなさん良い方なので、本当に可愛がってくださるんです。それも素晴らしい環境で。それを見て「自分もこの子の幸せに少し貢献できたんだ」と思えた瞬間が喜びなんです。

新しい家族が見つかると、保護動物たちは変わるのでしょうか。

杉本:がらりと変わりますね。その後お写真をいただく機会も多いのですが、本当にがらりと変わっています。同じわんちゃんとは思えないくらいセレブ犬になっていたり(笑)。

 どれだけ施設の方が愛情を持って育てていても、保護している施設の中ではやはり、たくさんいる中の1匹になってしまいます。それが家族の中で、愛情を持って育てられる状況になると本当に変わっていくんです。どこかしょんぼりして見えた子が、生き生きと家族の一員になっている様子を見ると私自身もすごく嬉しいです。

 もちろん、大きな啓蒙活動をすることも大切で、それは私の役割だとも思っています。けれど、私の中の力の源になるのは、実はそういった現場での小さな活動なんです。それが私のモチベーションを高めてくれる。感動の場面に立ち会える瞬間が、私にとってはとても大きなものなんです。

 そんなことばかりやっているから、芸能活動する時間はないんですよ(笑)。

「同伴避難」ができる環境作りを

2014年2月には、一般財団法人として動物環境・福祉協会の「Eva(エヴァ)」を設立し、理事長に就いています。さらに最近、公益財団法人に変わったとも聞きます。Evaでも、震災の保護動物などをサポートする活動をしているのでしょうか。

杉本:東北の支援は、私たちの活動の中でも大きなテーマです。

 ちょうど4月17日~26日の10日間、東京・六本木の俳優座で啓発を目的にした、動物たちの命について考えるチャリティーイベント「大きな声・大きな力 プロジェクト」を開催します。写真展や朗読会、映画上映などを実施しますが、イベントのうち2日間は震災に特化する予定です。飼い主のいない犬猫や東北の被災動物たちの現状について、私たちが何をすべきかをみなさんに考えていただけるような内容にするつもりです。

 実際に東北からも、被災してペットを亡くされ、大変な思いをした方にトークをしていただく予定です。その時の状況や気持ちを生でうかがうことは貴重だと思っています。お話を聞いて、「人ごとではなく、自分たちもいつ何時、何があるか分からないのだから、そういったことを想定して、ペットと共にどう避難するかを考えなくてはいけないんだ」とを訴えていきたいですね。入場無料ですから、少しでも興味を持たれたなら、是非いらしてください。

具体的に、震災などの自然災害に対して、ペットの飼い主はどのような対策を練ればいいのでしょうか。

昨年立ち上げた動物環境・福祉協会の「Eva(エヴァ)

杉本:まずはクレート(注:ペットを運搬するためのケース、ケージ)の中で、わんちゃんや猫ちゃんが落ち着いていられるような訓練が必要でしょう。

 必ずしも、どの避難所でもペットと共に、同じ空間にいられるわけではありません。「同行避難」とはペットと同じ場所に避難することを指しますが、生活する場所は別々だったりします。ペットと同じ場所で避難できることは「同伴避難」と言います。どういう形で避難できるのかを理解することが大前提でしょう。お住まいの自治体に問い合わせれば分かりますから、聞いてみてください。

 また避難所では、どうしても人間の支援が優先されます。支援物資を送っても、人間の食べ物は受け取ってもらえますが、ペットフードはいくら寄付したくても、受け取る余裕がなくなってしまうこともあるのです。そのため、3.11ではペットがやせ細り、ストレスなどで抵抗力が落ち、結局亡くなってしまったという悲惨なケースもありました。ですから最低限、自分の家族である犬や猫のご飯は確保しておくことが大切でしょう。

避難所でのペットの受け入れ体制は整っているのでしょうか。

杉本:避難した場所で人間を優先するのは当たり前のことだと思います。何もそこでペットを優先しろと言うつもりはありません。

 ただ本来は、どちらを優先させるということではないはずです。環境さえ整備されていれば同時に受け入れることができるんですから。それを実現して欲しいと思っています。そのためには、自治体側がペットとの同伴避難のマニュアルをしっかり構築し、ボランティアとの連携体制を整えてなければいけません。

ほかに飼い主がすべきことはありますか。

杉本:万が一、離ればなれになってしまった時のために、(個体識別のできる)マイクロチップを入れることも大切でしょう。(自治体に飼い犬を登録した後でもらう)鑑札だけでは、何か大変なトラブルに巻き込まれて取れてしまうことありますから。マイクロチップが埋め込まれていることが理想的でしょう。

7割の時間を保護活動に費やす

そもそも、なぜ動物保護活動を始めたのでしょうか。

杉本:実は私の個人的な動物愛護活動は、もう20年以上になるんです。20代の頃からですから。

 当時、暮らしていた世田谷の小さな地域で、個人的に保護活動をやっていました。保護活動と言っても、たまたま死にかけている子猫を見つけて、保護して、病気を治して、新しくもらってくださる方に譲渡して、という本当に個人的な活動だったんです。それも、たまたま見つけて、見て見ぬ振りをできないからということで始まりました。

 もちろん当時、保護した子猫たちを譲渡する瞬間は、愛情もありましたから、手放すのが本当に辛かったですね。けれど、感情に流されて手元に留めてしまえば、今後同じようなことが起こった時にほかの子を助けてあげられないと思ったんです。それが第一歩でした。

 その保護活動から、「地域猫活動」に携わるようになりました。飼い主のいない野良猫たちに、不妊去勢手術をして、一代限り、地域で温かく見守って暮らしていく。これが地域猫活動です。確か、こうした地域猫活動が始まった走りの頃だったと思います。

 ちょうどその頃、地域猫活動のパイオニアのような活動家の方が、私が保護活動をしているということを知って訪ねてきてくださったんですね。そこで色々とレクチャーを受けて地域猫活動を知るようになりました。

 個人的な活動だったんですが、どんどん地域からのSOSが来るようになったんです。それに応じて、要請があれば夜中に懐中電灯を持って保護に行くこともありました。生まれたばかりの子猫を引き取って、ほ乳瓶で育てて里親に譲渡したり、妊娠した母猫を引き受けて、出産させて譲渡したり。常に私の家には、何かしらの保護猫がいました。

 そういったことをやり始めてから、「これって動物保護活動なのかな」と思うようになったんですね。

個人的な活動が、公益財団法人を作るほど大きくなったのにはきっかけはあったのでしょうか。

杉本:大きなきっかけは、10年くらい前にあった「ひろしまドッグぱーく」の事件でした。テーマパークにいた大量の犬たちが、閉園後、ほとんど世話をされることなく放置されていました。このニュースを知った時、私はいてもたってもいられなくなって広島に飛び、現地で話を聞いたんです。

 そして、日本には動物を取り巻く問題が山積していて、何も整備されていないことを知りました。根本的に変えないといけないと実感して、それから全国的にメッセージを発信するようになっていきました。

 発信したことで、ネットワークはどんどん広がっていきました。当時は私の知らないこともたくさんありましたが、みなさんが「こういったこともあるんですよ」と教えてくださった。あらゆる実態を知るようになってますます問題意識が高くなり、目をそらすことができなくなっていったんです。

今では杉本さんのライフワークなのでしょうか。ご本人のブログも、保護動物の情報発信がとても多いですね。

杉本:「Beautyブログ」とは名ばかりで(笑)。動物保護は私の人生の生きる意味そのものです。

 今は人生の7割の時間を動物愛護の活動に費やしています。残りの3割で仕事をしている感じですね(笑)。手間も時間もかかりますし、難しい問題が山積していますから。

ペットの命を通して、社会のモラルを問う

動物保護活動を通して最も訴えたいことは何ですか。

杉本:たくさんありますが、大切なのは、愛玩動物といわれる動物たちの生きる環境と福祉の整備でしょう。それを整えるには、やらなくてはいけない細かな問題点がたくさんあります。

 ペット業者に対する規制も必要でしょう。とにかく供給の蛇口を閉めない限り、安易にペットを飼い始めて安易に飼育放棄する人が後を絶ちませんから。ペットを迎える時に、ある程度高いハードルを設けておかないと、本当に安易に動物を飼う人が多いんです。

 それを防ぐには業者の規制が欠かせません。特に問題なのは、ブリーダーとも言えないような繁殖業者です。こうした繁殖業者は動物を道具として扱っていますから、動物たちは悲惨な一生を終えてしまいます。動物愛護法に違反しているはずですが適切な取り締まりが行われていないのが事態です。ですから動物愛護法だけではなく、何かしら違う形の規制が必要なのではないかと思っています。

 例えば、業者が繁殖、飼育する段階で、動物にマイクロチップを付けることも一つの手でしょう。現段階ではペットにトレーサビリティは存在していない状況です。どの業者がどの子を生産したのかがしっかりと分かるようにならなくてはいけないでしょう。こうした環境が整わないから不要になった繁殖犬が山や川に大量に遺棄されてしまうんです。

 昨年に動物愛護法が改正されてから、保健所は業者のペットを受け取らないようになりました。受け取りを拒否されるので、受け皿を失った業者は山や川に動物たちを遺棄してしまう。マイクロチップの挿入が義務付けられれば抑止力にはなるでしょう。

Evaの理事長として、自治体の首長とも頻繁に面談しています。

杉本:やはり、いろいろな方面にアプローチすることが大切だと思っています。ただ、それだけでもダメなんですね。草の根的な運動と、国民に対する啓蒙啓発。この両方が大切だと思っています。

3月には「ペットと向き合う」という著書が発売されました。

3月に出版された「ペットと向き合う

杉本:ソフトな表紙でソフトなタイトルなんですが、中身は完全に動物愛護の話です(笑)。私が今訴えたいことを全部言おうと思って書きました。

 私は今まで本当にたくさんの命と向き合い、たくさんの子を見送ってきました。その経験から学んだことを書いています。

 ペットを愛する人ほど、その子が亡くなるとペットロスに陥ってしまいます。ですから、ペットロスにならないための心構えやそれを克服するために大切なことも書いています。

我が家にも5歳になる愛犬がいますが、今から愛犬を見送るのが怖くて仕方ありません。どのような心構えでいればいいのでしょうか。

杉本:ペットロスになった人は2度とそんな思いをしたくないとおっしゃって、次の子を迎えることをとても躊躇されます。しっかりと面倒を見て愛情を持ってペットと接していらした方ほど、「次迎えるのはもう無理」とおっしゃるんですね。

 けれど、私はそういう方だからこそ、縁があれば次も迎えてほしいと思うんです。私は安易にペットとの暮らしを「素晴らしい」とお勧めすることはしたくありません。だって本当に大変ですから。

 けれど、そんなことを全部分かったうえでペットを見送った方というのは、わんちゃんや猫ちゃんたちの存在価値を十分知っていらっしゃるはずです。だからこそもう1度迎えていただきたい。そんな思いを込めて書きました。

動物愛後活動家としてはどんなメッセージを盛り込んでいるのでしょうか。

杉本:ペットの問題はどうしても飼い主とその動物たちに限られてしまいます。けれど実はこれは、私たちの社会が、どのように動物の命を扱っているのかということでもあるはずです。

 私たちの社会が命をどう扱い、命とどう向き合うか。そんなモラルが問われているわけです。ペットの問題は、私たちの社会を問う問題である。そんなことも伝えています。

傍白

 東京で3.11を経験した私は、揺れが終わった直後、最も心配したのが自宅で留守番している愛犬のことでした。モノが落ちたり倒れたりして下敷きになっていやしないか。揺れに怯えていやしないか。安否が確認できるまでは、いてもたってもいられませんでした。同じような思いをした飼い主の方も多いのではないでしょうか。

 被災地の動物保護について調べる中で女優・杉本彩さんの活動を知りました。ブログを見て驚いたのはその真剣度です。草の根運動を地道に続けている様子が伝わります。

 今や国内のペット飼育頭数は2000万頭を上回り、15歳未満の子供の数よりも多くなっています。家庭の中で「家族の一員」としてペットと暮らす人も多いでしょう。もしもの時、その家族の一員がどう扱われ、一緒に避難するには何を準備すべきなのか。杉本さんの言葉を機に改めて「ペットと震災」について考えてはどうでしょうか。