今は毎日、執筆活動をされているのですか。

石原:そうですよ。

田中角栄氏を描いた『天才』(幻冬舎、2016年)はベストセラーになりました。

石原:角さんも本当に天才だったな。俺もいささか才能はあるけど、天才まではいかないから。

石原さんの業績も、もしかしたら死後にきちんと評価されるんじゃないですか。

石原:どうかな……。世の中って変なもので、ちゃんとした作家が政治家をやるのは好まないんですよ。政治家がちゃんとした小説を書くのも好まない。

 僕なんかもずいぶんいい本も書いたと自分で思うけどね。『遭難者』(新潮社、1992年)って、これは本当に自分の作品集の中で一番、粒のそろった作品集だけど、新聞などは全然、書評に取り上げてくれなかった。

 当時は小沢(一郎氏、自由党代表)や金丸(信氏、元副総理)さんの金権問題で自民党が指弾の対象になっていた。そんなときに、自民党の現職の国会議員がどんないい作品を書いたって、まともに評価してもらえない。そういう点で俺は、自分の文学に、申し訳ないと思うね。

お元気そうでよかったです。

石原:いや、元気じゃないの。もうじき死にます。もう俺、85歳だよ……。

いやいや、まだお元気ですよ。

石原:もう俺のことなんか、みんな忘れていく。この間、うちの大学の同窓会があって、仲の良かった男が娘を連れてきたんだ。その娘さんが、「石原さん、裕次郎さんって石原さんのお父さんですか」って聞かれて、笑っちゃった。

弟だよと(笑)。

石原:ああ……、本当に、時が過ぎていくんだな。だって若い連中は美空ひばりだって知らないだろう? 三島由紀夫なんて誰も覚えてないもんな……。

 文壇でもさ、川端康成とか小林秀雄さんみたいな人でも、存在感が薄れている。もうみんな本も読まなくなったしね。

本当にそうですね。売れるのは軽薄な本ばかりで……。

石原:ご苦労さまでした。

どうぞお元気で。

石原:もうじき死にます。

そんなことおっしゃらないでください。

石原:どうも、ありがとう。

(写真:村田 和聡)

3月11日で東日本大震災から7年を迎えます。被災地の復興が進む一方、関心や支援の熱が冷めたという話もあちこちから聞こえてきます。記憶の風化が進みつつある今だからこそ、大震災の発生したあの時、そして被災地の今について、考えてみる必要があるのではないでしょうか。

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