石原:今だって、例えば「減税」をアピールすれば簡単に票が集まる風潮がある。国全体にどれだけ借金があるのか、まともな国民だったら皆が知っている。それでも、「減税します」という政治家がいると歓迎してしまう。私はね、そういう国民の我欲(自分だけの利益を得ようとする欲望)が、今の政治の体たらくを招いている一因だと思っている。

 だからこそ、たくさんの同胞が亡くなったこの大震災を期に、日本という国を立て直さなくちゃいけない。そうしなかったら犠牲者だって浮かばれない、と思って発言した。その気持ちは、今もまったく変わらない。

日本は地震から逃れられない宿命

「3・11」の後も、熊本地震など大きな地震が相次いでいます。

石原:日本列島というのは世界最大の火山脈の上にある。だから日本中に震源があるようなものだ。いつ大きな地震が来るのか分からない。日本列島の置かれた場所は、地震とは無縁ではいられない。日本はそういう宿命を負っている、 歴史的にね。だから日本という国は地震がいつでも起きるという前提で物事を考えなくちゃいけない。

 でも悪いことばかりではない。地震が頻繁に起きるからこそ、「もののあわれ」のような日本人独特なメンタリティーというか、情念を作ってきた。それが日本の芸術を生み、日本人にしかない感性を育んできた。「もののあはれ」なんていう概念を持っているのは、世界でも日本人くらいじゃないですか。

「人間は猿に戻るのか」

震災を機に、反原発の機運が高まりました。

石原:そもそも日本人は、放射能にビクビクし過ぎていると感じるね。まったく今は、原発反対の声が随分とかまびすしい。吉本隆明さんも言っていたけど、今は日本全体が放射能に恐れおののいている。

 そんな状況ではまともな議論ができっこない。頭を冷やしてから、冷静に判断すべきだと思う。「人間は猿に戻るのか」と自問自答しなければならない。

原子力技術は必要だ、と。

石原:人間が開発した技術だから、人間がそれを抑制できないわけはないと思うのでね。確かに原子力というのは非常に強力な技術だ。だけど、「人間が神の領域を侵した」とは、僕は思わない。自分で開発したことは自分で改良できる。そうでなかったら人間、将来信じられないじゃないですか。

 小泉(純一郎氏、元首相)さんみたいな男は、フィンランドの核廃棄物の最終処分場を見に行ってから、急に反原発になっちゃった。粗忽だと思うね。

テクノロジーは人類がきちんと制御できるということですか。

石原:僕は文明論を持っているからね。1人のインテリゲンチアとして、自分のインテリジェンスを信じなかったら発想もできないし、物事の判断もできないじゃないですか。

 人間の歴史を振り返ってみても、人間の進歩というのは、まずサルから人間は分化した。なぜ分化できたかと言ったら、サルが使えなかった火を人間が使い始めたから。火を使っているうちに石の中から銅を取り出せるようになり、やがて鉄器時代が来た。

 鉄を手にした人間は航海技術を飛躍的に進化させた。それとグーテンベルクの印刷術。それから磁石を使って大西洋、インド洋を渡って植民地を開拓する時代となった。結局、人間は新しい技術を手にすることで、新しい時代を切り拓いてきた。それが人類の歴史の原点でしょう。そこに、原子力も入ってくる。

 やっぱり政治家に必要なことは自らの歴史観だよ。それがなければ発想できない。