わずか30分で決めた部隊配置

東日本大震災に臨んで、部隊をどのように配置したのですか。

火箱:最初に連絡したのは東北方面隊です。状況を確認し直ちに出動を命じました。

行方不明者の捜索に当たる東北方面隊・第44普通科連隊(写真=陸上自衛隊幕僚監部)
行方不明者の捜索に当たる東北方面隊・第44普通科連隊(写真=陸上自衛隊幕僚監部)
師団   都道府県 駐屯地 方面隊 派遣/残留
旅団
1 東京 練馬 東部 残留
2 北海道 旭川 北部 派遣
3 兵庫 千僧 中部 残留
4 福岡 福岡 西部 派遣
5 北海道 帯広 北部 待機→派遣
6 宮城 仙台 東北 派遣
7 北海道 東千歳 北部 隊員派遣
8 熊本 北熊本 西部 残留
9 青森 青森 東北 派遣
10 愛知 守山 中部 派遣
11 北海道 真駒内 北部 残留
12 群馬 相馬原 東部 派遣
13 広島 海田市 中部 待機→派遣
14 香川 善通寺 中部 待機→派遣
15 沖縄 那覇 西部 残留
中央即応集団(CRF) 東京 朝霞 東部 派遣 →原発

 次いで九州を担当する西部方面隊です。東北までの移動に最も時間がかかりますから。福岡にいる第4師団*を出動させるよう指示しました(表)。ただし、北熊本の第8師団と沖縄・那覇に駐屯する第15旅団*は動かさなかった。大災害が起きた非常時であっても、尖閣をはじめとする南西諸島への備えを疎かにはできません。第8師団は第15旅団の後詰めとして欠かせない存在です。

*:「師団」は陸自における作戦部隊の基本単位。中に、普通科、特科、機甲科や兵站部隊から構成される。「旅団」は師団の小規模なもの

 次に、東海・北陸・近畿・中国・四国を担当する中部方面隊(兵庫・伊丹)に連絡しました。中部からは第10師団(愛知・守山)を現場に投入する一方で、第3師団(兵庫・千僧)には残留を、第13旅団(広島・海田市)と第14旅団(香川・善通寺)には待機を命じました。

 第3師団は第10師団が抜けた穴を埋めるのに欠かせません。大都市・大阪が管轄内にあるし、北陸の原発を警戒する必要もあります。第13旅団は、日本海方面で北朝鮮が動いた場合に備えるため、第14旅団は四国で連動型南海地震が起きた場合に備えるためです。

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