イラスト=タケウマ

 経営目標としてROEを掲げ、今年の株主総会で投資家に説明する企業は多いだろう。しかしROEが高いからといって優良企業とは限らない。「1期だけ高ROE」「利益は少ないが高ROE」…といった企業が交じっているからだ。

 本誌は今回、東証1部上場企業を財務面から徹底的に分析した。ROEは「売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」に分解することができる。この3要素のどれを改善すれば、ROEが高く、体質も強い企業になるのか。あるいは企業規模別に見た違いはどうか。それらを勘案しながら、“本物”の優良企業とそうでない高ROE企業をあぶり出した。それがこの6つのランキングだ。

注:対象は東証1部上場企業。ROEは営業利益を自己資本で割って算出した。連結ベース。2015年3月期実績でランキング化した。期間中、持ち株会社化した企業などは対象から外している(以下同)。エスクリの2014年3月期は純利益ベース。ソフトバンクの2013年3月期以降は、親会社持ち分に対するROEで、純利益ベース
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 まずは、本当に強さを持つ「スーパーROE企業」(上表参照)。「米国では長期にわたって20%以上の高いROEを達成している企業こそ尊敬される」と早稲田大学ビジネススクールの入山章栄・准教授は言う。それに倣って2011年3月期から2015年3月期まで5期連続で20%以上のROEを達成している企業を選び出してみた。

 上位にはネット系企業が多い。一見すると、少ない資本でも売り上げを伸ばせるネット系の特質が表れたように思えるが、そうではない。スーパーROE企業の多くは、売上高利益率や総資産回転率など、前述の3つのバランスがいい。

 例えばトップに入った比較サイト、カカクコムは2015年3月期の売上高営業利益率が47%、総資産回転率が1.1回、財務レバレッジが1.3倍。負債に頼りすぎず、資産を効率的に使って売上高を上げ、利益を高めていることが分かる。

 続く2つは、大企業(時価総額5000億円以上)と、中堅企業(同1000億円以下)に分けてみた場合のROEランキングだ。際立つのは中堅でトップの田淵電機。ROE75.4%は全体を通じても1位だ。太陽光発電で作った直流電力を交流に変換する装置の需要が、国の再生可能エネルギー買い取り制度で2014年3月期から急増した。

(左)注:ROEは2015年3月期。対象は東証1部、時価総額1000億円以下(6月4日終値、右同)
(右)注:ROEは2015年3月期。対象は時価総額5000億円以上の企業
注:対象は東証1部。2015年3月期の営業利益率が15%以上の企業の中でROEの高い企業をランキングした

成長企業型財務のソフトバンク

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 大企業部門では米国で好調な販売が続く富士重工業がトップ。4位のソフトバンクは、スーパーROEランキングでも7位に入っている。

 ソフトバンクの前期の営業利益率は11.3%でまずまずの水準。ROEを押し上げたのは、7.4倍に達した財務レバレッジの高さだ。自己資本よりもはるかに大きな負債を使って利益を押し上げ続けている。もっとも、市場関係者には約10兆円に上る有利子負債を不安視する向きも少なくない。今もなお成長途上にある若い企業に多い財務構造であることを、どう評価するかは判断の分かれるところかもしれない。

 「ROEを上げる王道は利益率と売上高を上げること」と投資信託会社、レオス・キャピタルワークスの取締役でファンドマネジャーの湯浅光裕氏は指摘する。36ページにあるランキングはその2つの面からROEを押し上げている企業のそれだ。

 利益率が高く、ROEも高い企業のランキングで目立つのは、5位に入った日本M&Aセンター。後継者のいない中小企業などのM&A(合併・買収)仲介という独特の事業を作り出し、ニッチ市場で高い利益率を実現している。

 一方、総資産回転率(売上高/総資産)が高く、ROEも高い企業のランキングでは、ユナイテッドアローズが7位に入った。2015年3月期は、円安で原材料価格が高騰したことなどから営業利益は前期比16.8%の減益となったが、18店の出店が効いた。

注:対象は東証1部の2015年3月期企業。総資産回転率が1.5以上でROEの高い企業をランキングした

 一見、規模を拡大しただけのように思われがちだが、減益となった後、新商品の販売で1回当たりの投入量を減らしながら、投入回数を年間6回から8回に増やすようにしている。市場の変化に即応した商品企画や販売施策の柔軟さが数字に表れた格好で、ROEを高める経営にはこうした点も必要だ。

注:対象は2015年3月期、東証1部。営業利益率が5%未満で、財務レバレッジが5倍以上の企業でROEの高い企業をランキングした

 今回作成したランキングで最も評価が難しいのが、利益率は低いものの、財務レバレッジの高さでROEを押し上げている企業だ。上のランキングがそれだが、ぴあ、飛島建設などかつて業績悪化に苦しんだ企業も多い。

 投資先を選ぶ際には、単に結果としてのROEを眺めるだけでなく、どのようにして出来上がったものなのか、過程を吟味することも大事だ。

日経ビジネス2015年6月22日号 35~37ページより

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