生保、ROE信奉に潜むワナ

 生命保険各社が日本株買いに動き出す。低金利が長引く中、契約者に約束した1%程度の運用利回りを確保するためだ。優良企業の選別にROE(自己資本利益率)を使うが、その活用には盲点も潜む。

 「クジラに引っ付くコバンザメ」。東京・兜町の証券街では生保の運用方針にこんな揶揄が広がる。クジラは140兆円規模(2014年末)の公的年金を動かす年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)。コバンザメはGPIFと似たような投資行動を取る生保だ。

 GPIFは12%だった日本株配分比率を25%にする方針。生保の運用資産のうち株式は6%。これが1ポイント高まると3兆円増え、株式相場への影響は大きい。主要9社は2015年度、日経平均株価が2万1000~2万3000円程度まで上昇すると想定する。買い増しに向けた有力な投資尺度がROEだ。

 日本生命保険は「ROEが一定期間で5%を割った企業やトレンドが下がっている企業は投資対象から外す検討をする」(佐藤和夫・財務企画部長)。住友生命保険は対話によりROEを高められそうな約200社を選んで訪問する。

 しかし、そこにはワナがある。ROE増大には、純利益の極大化と、自己資本の極小化という2つの方法がある。純利益を極大化するのが王道だが、純利益が伸び悩み、自社株買いや配当の増額といった財務テクニックで自己資本を極小化する動きは要注意だ。

 中国経済の減速などで建設機械販売が落ち込むコマツは、3月末に自社株買いを表明。今期の純利益見通しが2割減の三井物産、1割減の三菱商事は「成長と株主還元の二兎を追う」(三井物産の飯島彰己会長)として継続的な自社株買いを示唆する。こうした動きは、ややもすれば短期的な株価維持に終始してしまう。ROEだけでは成長力を見極められない。

 ROEに偏重した投資先の選別は、安易な株式の買い増しにつながりかねない。中長期で成長株を発掘すべき生保だからこそ、ROEが持つ功罪の両面を認識すべきだろう。

(清水 崇史)

離陸前の活況に戸惑うドローン

内閣府大臣政務官の小泉進次郎氏も来場した(写真=都築 雅人)

 5月20日から22日にかけて、千葉県の幕張メッセで開催された国際ドローン展。国内では初めてとなるドローンの展示会とあって、3日間で約1万人が訪れた。

 出展した50社の中には、セコム、コマツ、中日本ハイウェイ・エンジニアリングといった大手企業も名を連ねた。

 セコムが展示した警備用ドローンは、決められたエリア内に不審者や不審車両が侵入した場合、ドローンが自律飛行で追尾し、人物やナンバープレートを自動で撮影する。

 コマツは工事現場での測量にドローンを活用。「広さにもよるが、2~3人でやって1カ月かかっていた測量が、1人の操作により半日でできるようになる」。商用ドローンメーカーのプロドローンは、3輪バイクとドローンをセットにした商品を参考出品した。

 4月に起きた、いわゆる「官邸ドローン事件」以降、ドローン墜落のニュースが相次ぎ、図らずも「ドローン」の認知度は急上昇した。一方、商用ドローン業界では、この“活況”に戸惑う企業も少なくない。

 「現在はホビー用のドローンが注目されているだけ。ホビー用と商用は分けて議論すべき」と話すのは、プロドローンの河野雅一社長だ。本格的な商用ドローンの実用化に踏み切るには、技術も制度も未整備。国際ドローン展で出品した企業も、セコムのような一部企業を除き、実証実験レベルの企業がほとんどだ。ホビー用途で明らかになったネガティブな側面や、現段階での技術不足を指摘され、規制ばかり先行しては、市場は育たない。

 「パソコンの歴史で例えるなら、ドローンはまだ1990年に入ったくらいの段階」(千葉大学の野波健蔵・特別教授)。パソコンもホビー用から始まり、おもちゃと言われ続け、10年以上かけて仕事に欠かせない道具になった。

 新産業の芽を早々と摘み取らないためにも、規制やルールの整備には、ホビー用と商用を分けた慎重な対応が必要になるだろう。

(染原 睦美)

日経ビジネス2015年6月1日号 19ページより目次

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