あなたが想定する消費者像や法則は、既に過去のものとなり陳腐化している──。
年の瀬が迫った2014年12月29日の夜、都内を周遊する長さ8m以上の豪華なリムジンカーの中で、赤やピンクのドレスで着飾った5人の女性がパーティーを楽しんでいた。
彼女たちの正体は普通の女子大生。部活でつながる仲良し5人組が卒業前の記念にと「リムジン女子会」を企画した。
元来、海外の要人や富裕層向けサービスだったリムジン貸し切り。それに、節約志向が強いはずの若い女子が群がっている。
「富裕層と低所得者層に2極化」「若者の消費離れ」といった表現では説明のつかない現象。そんな従来の常識や既成概念を覆すような消費が広がっている。
「一過性の取るに足らない些末な現象」と無視しては時代を見誤る。誰もが同じモノやサービスを求めた「マス消費」の時代はとうの昔に終焉。消費市場は2極化どころか「1000極」「1万極」に分散、全体がナノ化へと突き進む。
もはや現代の消費者に対して、特定のセグメントに的を絞る古びたマーケティング手法は通用しない。消費市場に立ち向かう企業が今の消費を的確につかむには、自身が発想を「逆転」させるしかない。まずは反常識が続出する「ナノ市場」の現場を見ていこう。
(井上 理、河野 紀子、中 尚子)