ランキングで2位に選ばれたソフトバンク社長の孫正義。異色の評価者が、三菱ケミカルホールディングス社長の小林喜光だ。小林は産業競争力会議の民間議員や東京電力の社外取締役など社外活動にも力を入れるのに対し、孫は財界活動などには関与しない。三菱グループ中核企業の社長として、なぜ孫を選んだのか。

(写真=ロイター/アフロ)
Masayoshi Son
ソフトバンク社長。大型買収や大胆な商品戦略などで企業価値を高めてきた。日本2位の時価総額でも「孫正義ディスカウントがある」と不満顔で、ハングリー精神は衰えていない
評価される理由
注:総得点のうち各項目に入った割合を5点満点で示している。孫正義社長の場合、「M&A」と「グローバル経営」が満点。調査では7項目について尋ね、得点の高い順から5項目を抽出した

 ベスト経営者はソフトバンク社長の孫正義しか思いつかない。ゼロから事業を始めて、最も企業価値を大きく伸ばした経営者だ。従来の秩序を破壊するから評価は分かれるだろうが、他の経営者とはスケールが違う。

 2000年頃のインターネットバブルで孫正義への注目が集まった。彼はソフトウエアの流通を手掛けていて、三菱化学の記憶媒体を使っていた縁で、バブルの前から目をつけていた。ハイテク見本市運営会社の買収や米ヤフーへの出資など、決断がとにかく速い。

 失敗にもめげず、常にチャレンジをして次々と先手を打つ。投資した株の価値が数千倍になった中国のアリババ集団への出資もそう。10年以上前に手を打つ感性が素晴らしい。当時の首相と連携してFIT(再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度)を導入させ、再エネ事業に参入した。時代を読む不思議なセンスがある。

 感性だけでなく、細かい数字へのこだわりもすさまじい。経団連など財界活動は全くやらないので「自分のことばかり」と批判する人もいるが、業績で誰にも負けない結果を出している。

(写真=尾関 裕士)

 次世代の経営者が学ぶべきは、成功しても、とてつもない金持ちになっても挑戦し続けるところだ。今は、小さな幸せを必死に守る経営者が多過ぎる。孫正義はいつまでもボクサーのようにリングに上がり、ハングリー精神を持って時代を変えようとしている。

 今はみんなが豊かで恵まれ過ぎているから、逆に虐げられている人の苦しみは深い。いつの時代も才能のある人や負けず嫌いの人はいる。その中から孫正義のようなハングリー精神を持った経営者が生まれるだろう。ただ、これからはそうした人材は海外に出る可能性が高い。次の孫正義は日本という国にはとどまらないかもしれない。孫正義も高校中退で米国の大学を卒業し、海外で戦い続けている。海外で勝つ人材、すなわち「和僑」と呼ばれるような人の中からベスト経営者は生まれるだろう。(談)

=敬称略

日経ビジネス2014年11月17日号 34~35ページより

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