シリコンバレーの成功原理

『ZERO to ONE』
ピーター・ティール著、関 美和訳
1600円(NHK出版)

 ビジネスはしばしば戦争に例えられる。厳しい競争環境の下では皆が差別化に汲々とし、生き残りを懸けた消耗戦を繰り広げざるを得ない。この不毛な競争から抜け出し、真の成功を勝ち取るためには、米グーグルや米アップルのように「ゼロから1を生み出し」、市場を独占する以外にないと著者は説く。本書は、米ペイパル創業者であり、シリコンバレー有数の起業家・投資家として知られる著者が、米スタンフォード大学で講義した「起業論」の内容をまとめたものだ。

 本書で語られる起業成功の原理は実に明快だ。それは、利害とビジョンを共有する“マフィア”が結集して、飽くなき探究により「隠れた真実」を見つけ出し、ニッチ市場を創造・支配することにほかならない。成功のカギは競争優位の確立ではなく、競争を避けることにある──。ベンチャーマインドの神髄が明かされた、起業家志望者やビジネスリーダー必読の書。

クライマーの経営哲学

『モンベル 7つの決断』
辰野 勇著
760円(山と渓谷社)

 起業は前人未到のルートを行く登山のようなもので、一瞬の判断の遅れが命取りになる。アウトドア総合メーカー・モンベル創業者の辰野勇氏は、21歳でアイガー北壁の世界最年少登攀記録(当時)を塗り替えた生粋のクライマー。登山で多くの仲間を失い、リスクマネジメントと決断の大切さを体で学んだという。本書は、そんな辰野氏が28歳で資金ゼロから起業し、モンベルを登山用品のトップメーカーに育て上げるまでの軌跡をつづったものだ。

 評者が興味を引かれたのは、終身雇用を守る同社の経営方針と、有料会員50万人を擁する同社のファンクラブ、「モンベルクラブ」の存在だ。それは、経営者・社員・顧客の枠を超えて、山をこよなく愛する人々が思いを共有する場でもある。「好きなことをやりなさい。そして、やっていることを好きになりなさい」──。本書の最後に紹介されたこの言葉に、モンベルが体現する理想的なベンチャーのありようを見た。

「伸びしろがある企業」とは

『成毛眞の本当は教えたくない意外な成長企業100』
成毛 眞著
1300円(朝日新聞出版)

 アベノミクスが始動して2年が経とうとしているが、日本経済の先行きはいまだ不透明なままだ。しかし、日本には伸びしろを持った企業がひしめいている。そこでベンチャーの目利きとして知られるマイクロソフト日本法人の元社長・成毛眞氏が、東京五輪需要、設備投資、グローバルニッチトップ、超長寿企業、若者のマイルドヤンキー化など、様々な切り口から有望企業を精査。今後の成長が期待できる100社をリストアップしたのが本書である。

 カニカマ製造装置を世界20カ国に輸出するヤナギヤ、斬新な発想とデザインで注目の家電ベンチャー・バルミューダ、電線の地中化を牽引する関電工など、顔ぶれは多士済々。どの企業にも共通するのは、トライ&エラーを許容する懐の深さだ。地方には知られざる優良企業が多く、東京中心の視座を捨てれば、成長の種は至る所に転がっている。日本もまだまだ捨てたものではないと思わせてくれる。

文=吉田 燿子 写真=スタジオキャスパー
*価格は税抜き

日経ビジネス2014年11月17日号 116ページより目次

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