「ここ数年、都内、地方を問わず、日本中の居酒屋で飲めるようになった気がする」──。お酒好きの読者の多くは、そう感じているに違いない。宮崎県都城市に本社を置く霧島酒造の主力芋焼酎「黒霧島」のことだ。

 各地域に蔵元が林立し独自の味を開発し合ってきた焼酎産業は、とりわけ細分化の進んだ“群雄割拠市場”。ほんの15年前まで、全国区の知名度を持つ商品は、三和酒類の麦焼酎「いいちこ」くらいしかなかった。

 そんな状況を一変させたのが黒霧島だ。1998年の発売以来、「焼酎500年史」に例がない快進撃を見せ、その結果、霧島酒造は2012年、売上高で三和酒類を抜き日本一に躍り出た。翌年には全国の各地域で1割以上のシェアを握る“国内制覇”も達成。その成長力や収益力は名だたる大企業すら圧倒し、今や同社は、1990年代後半以降のデフレ下で最も事業拡大に成功した最強国内製造業の一社と言っていい。

 18年前、過当競争や増税を前に経営危機の淵にあった同社は、いかに蘇生し、天下統一を成し遂げたのか。知られざる老舗蔵元の戦略には、業界の常識を否定し自社に最適化した、多くの最新経営理論が盛り込まれていた。

(馬場 燃、宇賀神 宰司、宗像 誠之)


(写真=川口 大藏)

CONTENTS

PART 1
こんな会社、見たことない
記録ずくめの全国制覇

PART 2
「黒霧島」、全国制覇への5000日
完全ドキュメント 創業80年目の一念発起

PART 3
クロキリ戦略を大企業のグローバル化に応用する

日経ビジネス2014年11月10日号 26~27ページより目次