2009年に「価格崩壊の罪と罰──忍び寄る技術立国の危機」という特集記事を執筆・編集したことがあります。デフレが小売りだけではなくメーカーからも収益を奪い、研究開発への投資を細らせ、モノ作りの基盤を蝕んでいく──。そんな危機感をあらわにした内容です。ただ今、1つだけ反省があります。というのも、同特集では重要な視点が抜け落ちていたことに気付いたからです。

 それは、デフレの長期化が「現金選好」を強めるという点です。事実、企業が抱える現預金は昨年6月末時点で約220兆円とリーマンショック直後の2008年12月末から19四半期連続で増加しました。収益力低下と現金選好。この2つが重なった状態で革新的商品が生まれるはずはありません。

 「日経トレンディ」が昨年10月末に発表した「2013年ヒット商品ベスト30」が、日本企業の現状を象徴しています。ベスト10では6位に米グーグルの「Nexus 7」と米アップルの「iPad mini」が、8位には韓国企業のふとん専用のダニクリーナー「レイコップ」が、9位には蘭フィリップスの「ノンフライヤー」がと、外国企業の手による4商品がランクインしました。

 まずは染みついたデフレ経営の体質を変えることが肝要です。デフレは日本だけの現象。世界でライバルと伍するためには、デフレ発想から脱却しなければならない。今号の特集のメッセージは明快です。

 今年10月、「日経ビジネス」は45周年を迎えます。節目の年に編集長に就任することになり、身が引き締まる思いです。読者の皆様に末永く支持いただけるよう、誌面の充実に一層努めてまいります。

(田村 俊一)

日経ビジネス2014年4月7日号 3ページより目次

この記事はシリーズ「編集長の視点」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。