SPM…浮遊粒子状物質(PM10とほぼ同義)、O3…オゾン、NOx…窒素酸化物、SOx…硫黄酸化物、VOC…揮発性有機化合物(イラスト=加納 徳博)

 中国の環境汚染は今に始まったことではないが、民衆の関心が一気に高まったのは、「PM2.5」の存在が知られるようになってからだ。

 2011年末に米国大使館と北京市環境保護局の大気汚染指数に大きな差があることをメディアが報道。米国大使館が公表したPM2.5の数値の高さはインターネットで瞬く間に広がり、激震が走った。

 ではPM2.5とは、どのような物質のことを言うのか。大気には目に見えない様々な小さな粒子が漂っている。粒子の種類は無数にあるため、観測は粒子の直径ごとに分類して行う。

PM2.5は極小の粒子だ
●PM2.5と細砂、髪の毛のサイズ比較
PM2.5は髪の毛の直径の約30分の1という小さな粒子だ。だからこそ、肺の奥深くまで入り込み、健康被害を引き起こす

 この中で、直径が10マイクロメートル(μm、マイクロは100万分の1)以下のものを「SPM」もしくは「PM10」と呼び、同じく2.5μm以下のものを「PM2.5」と呼ぶ。髪の毛の直径は約70μmでPM2.5の約30倍の大きさだ。

 PM2.5は、あまりに粒子が小さいために健康へ影響を及ぼす。粒子が大きなSPMは気管までしか入らないが、PM2.5は肺の奥深くまで到達。しかも、一度体内に入ると排出されにくく、喘息や心臓疾患の原因になると言われる。

 発生源には、工場や発電所、自動車、焼き畑など人為的なものと、植物や火山の噴火といった自然由来のものがある。発生源から放出される煤煙中のPM2.5を「1次粒子」と呼ぶ。また、大気中に放出されたNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)、VOC(揮発性有機化合物)といった大気汚染物質が化学反応を起こすことによって生じるPM2.5を「2次粒子」と呼ぶ。

北京では自動車の影響が大きい
●PM2.5 発生源の内訳
出所:北京市、2012年1月発表

 2次粒子の発生には光化学スモッグが関係している。大気中のNOxやVOCに太陽からの紫外線が当たると反応が起きてO3(オゾン)などができる。オゾンは光化学スモッグの主要物質だ。このオゾンや紫外線が大気汚染物質と反応すると、PM2.5が発生する。ただし、メカニズムはすべてが解明されたわけではない。

 北京市の発表によれば、市内のPM2.5の主要因は自動車。これに隣接する河北省などから流れ込んでくる量を加えると、全体の半分ほどになる。

 確かに北京や河北省の汚染レベルは高いが、この地域に限った話ではなく、広範囲にわたっている。

面的に広がる中国の発生源
●NOxの発生地点
出所:国立環境研究所

 上の地図は、NOxの発生量を表したもの。NOxは発生直後しか測定できない。このため、PM2.5を含んだ発生源の場所が特定できる。日本が東京など大都市に集中しているのに対して、中国は全国各地に面的に発生源が存在することが分かるだろう。

日経ビジネス2014年2月3日号 32~33ページより

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