昭和の時代の流通業界を記憶している人にとって、イオンがダイエーを子会社化した昨年のニュースは、隔世の感を覚える出来事でした。かつて「価格破壊」で流通革命を起こしたダイエーを傘下に収めることで、イオンの連結売上高は、圧倒的な小売業界トップとなりました。

 イオンとダイエーの優劣はどこにあったのか。都市部に進出したダイエーと地方の小商圏を攻めたイオン。不動産の自社所有にこだわったダイエーとリースを巧みに使ったイオン。こうした戦術面の違いが、その後の環境変化によって、明暗を分けたのは確かです。ただ、今回、イオンの岡田元也社長をインタビューしてみて、もう1つ秘密が分かったような気がします。それは挑戦する社風です。

 特集の中で、小型スーパーの「まいばすけっと」を立ち上げた社員に岡田社長が何度も「ダメ出し」し、それでも社員が食い下がる場面が出てきます。そして今度は、まいばすけっとの成功に刺激を受け、小型ディスカウント店に挑戦したいという社員が出てきます。

 「変化対応を求められる小売業にとって、最も重要なのは企業内起業家の存在」。こう強調する岡田社長は買収した会社や店舗に、意図的に変革志向の強い人材を送り込んでいます。岡田社長にとって、M&A(合併・買収)で膨張する251の連結子会社は、起業家を育てる道場でもあります。

 挑戦する社風を失えば、今度はイオンがダイエーと同じ道をたどるかもしれません。大企業の中にいかにベンチャー精神を埋め込むか。巨大流通業の実像に迫りつつ、一方でこの命題の解を探るのが、今号の特集の狙いの1つでした。

(山川 龍雄)

日経ビジネス2014年1月27日号 3ページより目次

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