「カネ」と「縁」の切れ目

 中国にまた1つ「世界一」の称号が加わる。中国の税関総署によると、2013年のモノの貿易総額(輸出入の合計額)が4兆1603億ドル(約430兆円)に達した。米国の同貿易額は2013年11月までで約3.5兆ドル(約360兆円)なので、米国を抜いて世界最大の貿易国になるのはほぼ確実だ。

 日本だけが前年割れ
↓中国のモノの貿易総額と主要相手国・地域(2013年)
(出所:中国税関総署)

 貿易額で中国が世界一になっても驚きは少ない。日本が注目すべきはその中身だ。中国が、東南アジア諸国や欧州、米国など主要相手国・地域との貿易額を増やす中で、日本との貿易額だけが前年の実績を割り込んだ。

 日本から中国への輸出が大きく落ち込んだのが響いた。日中関係の悪化が長引いている時期だけに、貿易額の減少が中国国内の反日派を勢いづける要因になりかねない。

 2012年に反日デモが広がった時、ある経済学者の「日本に『経済戦争』を仕掛けろ」という論文が中国の新聞に掲載された。日本にとって中国は最大の輸出先であるが、中国にとって日本は最も重要な輸出先ではない。ゆえに、貿易を止めれば、より大きな損害を被るのは日本側だという趣旨だった。

 こんな荒唐無稽な主張が中国の経済界で主流になっているわけではない。だが、中国にも「朋友莫交財、交財断往来(カネの切れ目は縁の切れ目の意)」ということわざがあるだけに注意が必要だ。

(上海支局 坂田 亮太郎)

失業率低下の実態は?

 雇用環境はどこまで改善しているのか。米国の昨年12月の失業率は6.7%だった。2カ月連続で0.3ポイント低下し、改善ピッチが急加速しているように見える。だが、これは数字のマジック。働く意思を持つ人の多さを表す「労働参加率」が低下したことが大きな要因だ。職探しをあきらめた人が多いとすれば、喜ぶわけにはいかない。


(ニューヨーク支局 細田 孝宏)

対アフリカ外交 8年の空白の重さ

 安倍晋三首相が1月10日のコートジボワールを皮切りに、モザンビーク、エチオピアのアフリカ3カ国を歴訪した。首相がアフリカ諸国を歴訪するのは小泉政権以来、8年ぶりだ。

 アフリカ諸国は過去10年の間、資源獲得を目的とする中国からヒト・モノ・カネの支援を受けて急成長を遂げた。日本は出遅れの感が否めない。

 安倍首相は歴訪中、人材育成や雇用創出などを、中国にはない「日本の貢献」として強調した。これは大切だ。ただし、トップの言葉によるコミットは“初めの一歩”にすぎない。より重要なのは、日本企業がアフリカ進出に長期的かつ本気で取り組むかどうかだ。

(ロンドン支局 大竹 剛)

中国より深刻か、インドの大気汚染

数m先が霞むほど深刻なインドの大気汚染(写真=ロイター/アフロ)

 微小粒子状物質「PM2.5」。つい中国を連想してしまう言葉だが、世界を見渡せば、何もこれ、中国の専売特許ではない。

 インドは中国より深刻だ。デリー空港は1月上旬、大気汚染による視界不良のため離着陸不能に。地方空港では着陸失敗の事故も起こった。PM2.5濃度が世界保健機関(WHO)が定める基準の10~20倍というのだからただ事ではない。シンガポールも、インドネシアから飛来するPM2.5を含む汚染大気「ヘイズ」に苦しんでいる。

 水質汚染とは異なり、大気汚染には逃げ場がなく、国境をも容易に越える。経済発展の代償は、いわば全人類に突きつけられている。

(香港支局 池田 信太朗)

IBMのワトソン、雲に乗る

 「クラウド(雲)」の上から人工知能がサービスを提供する。

 米IBMが、自動質疑応答システムを備える高性能コンピューター「ワトソン」の事業化に向け、10億ドルを投じると発表した。約2000人の専門部隊も設置。インターネットを介したクラウドコンピューティングの形態で、ビッグデータ分析サービスを提供する。企業や大学などの研究開発を支援する。

 ワトソンは、人間が話す自然言語に対応する人工知能。2011年2月に、米国の人気クイズ番組で、人間のチャンピオンに勝ち、一躍有名になった。その後、IBMは医療分野などで応用研究を進めていた。

(ニューヨーク支局 細田 孝宏)

アイルランド“復活”も、危機は未解決

 債務危機に陥っていたアイルランドが1月7日、国債市場に復帰した。国際通貨基金(IMF)や欧州連合(EU)の支援から脱し、再び市場から資金調達できるようになった。新発の10年物国債は、募集額の約4倍の応札があった。

欧州中央銀行のマリオ・ドラギ総裁は、楽観ムードの高まりを警戒する(写真=ロイター/アフロ)

 市場には楽観ムードが漂い始めたが、これは要注意だ。統一通貨ユーロの矛盾は今もくすぶる。ドイツと南欧諸国の競争力格差は依然として大きい。

 欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ総裁が「勝利宣言をするのは時期尚早」とクギを刺したのも、「むべなるかな」と言える。

(ロンドン支局 大竹 剛)

日経ビジネス2014年1月20日号 86~87ページより目次

この記事はシリーズ「世界鳥瞰(2014年1月20日号)」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。