シリーズ
シリーズ検証

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忖度
社員ら15人が重軽傷を負った新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)の爆発事故から2日後の昨年9月5日。社内で緊急の労使間協議会が開かれた。「可能な限り速やかに(事故を起こした第1コークス炉以外の)コークス炉を復旧させ、安…
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庇護
「軽油タンク用消火設備の元栓が閉じた状態になっている。火事になっても対応できない。取り返しのつかないことになってしまう」新日鉄住金名古屋製鉄所のベテラン従業員は異常事態に気付き、慌てて上司に報告したが、明確な返事はない。
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発火
「ボンッ、ボン」。昨年9月3日正午過ぎ、耳をつんざくほどの爆発音が立て続けに鳴り響いた。場所は新日鉄住金名古屋製鉄所(愛知県東海市)の第1コークス炉。炉にくべる前の石炭を一時保管する石炭塔から真っ赤な炎と黒煙が立ち上り、…
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夢現――最終回
打倒代ゼミ──。東進ハイスクールを運営するナガセは1992年以降、小規模な校舎の新設を次々と仕掛けていく。わずか1年半で加盟校は全国300校を超え、現在は全国883校にまで拡大している。
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喪失
「代ゼミショック」から1カ月後の9月30日、受験産業に再び激震が走った。全国に約260校を展開する中堅予備校、秀英予備校が17校を、2015年3月で閉鎖すると発表したのだ。秀英予備校の運営形態は、代々木ゼミナールに似てい…
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聖俗
聖と俗。そのはざまを行き来しつつ、半世紀にわたって高宮学園代々木ゼミナールを支配したのが、初代理事長の高宮行男だった。高宮家の系譜、代ゼミ勃興の経緯は、ライバル予備校と比べても異色だ。
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絶頂
高宮学園代々木ゼミナールは1980年代、破竹の勢いで全国各地に進出していく。往時を知る50代の講師は、「それはまるで国取り合戦の様相を呈していた。駅前の一等地に“城”を次々と構え、ほかの予備校を駆逐していった」と振り返る…
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地獄
高宮学園代々木ゼミナールが8月25日に大規模な校舎閉鎖を発表してから3カ月が経った。全国27の校舎のうち、20校が来年3月末をもって閉鎖される。代ゼミでは職員と講師の大量リストラが今、大詰めを迎えている。
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功績――最終回
9月5日。厳しい残暑の中、鳥取県庁で知事の平井伸治は一人の男の来訪を待っていた。昼頃に姿を見せたのはスカイマーク社長の西久保慎一。面会後、報道陣を前にした平井の表情は心なしか明るい。そして「胸をなでおろした」と息を吐いた…
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厳冬
いよいよ正念場を迎えたスカイマーク。残された時間は幾ばくなのだろうか。 10月30日、スカイマークは2015年3月通期の単独業績予想を下方修正すると発表した。純損益は当初予想した3億円の黒字から一転し、136億円の赤字(…
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膨張
経営者は時に、企業の低迷期ではなく、絶頂期に決断を見誤る。その目を曇らせるのは成功がもたらす万能感か、それともさらなる成長を求める飢餓感か──。スカイマーク社長の西久保慎一も同じ陥穽にはまった。
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栄光
東京・お台場のホテル・グランパシフィックメリディアン(当時)の宴会場。集まった人々を前に、マイクを握った男は切り出した。「カネならあります。皆さん、安心してください」。
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窮地
「西久保はいったい、どういうつもりなんだ」10月3日、フランス南部のトゥールーズ。欧州航空機大手エアバスの本社で、ある幹部は怒声を上げた。手にはこの日、日本で報じられたあるニュース記事が握られていた。
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禍根[最終回]
経済産業省の松岡建志は、サービス政策課長就任後の初仕事がベネッセコーポレーションの個人情報漏洩事件への対応になるとは、夢にも思わなかった。7月10日の着任と同時に、ベネッセに対して事件の経緯などの説明を求める報告徴収を実…
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失墜
原田泳幸は、その日も足早に記者会見場を後にした。ベネッセホールディングス(HD)の会長兼社長として、記者会見に臨んだのは9月10日で4回目。質問に答える姿には、漏洩事件発覚前にはあった“プロ経営者”としての勢いはない。
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陥穽
「システムの設定が非常に複雑だった」ベネッセコーポレーション社長の小林仁は9月10日の記者会見で、そう弁明した。この日、同社はセキュリティー対策で重大な落ち度が3つあったと説明した。
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慢心
2005年12月、ベネッセは同社の歴史で初めて個人情報管理に関する大規模研修を実施した。社長を含む幹部社員100人弱が参加。個人情報漏洩も研修テーマの一つだった。「時代は変わった」。同社の元経営幹部は、今もその日のこと…
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空白
「子供の大量のデータがある。買わないか」。大阪市の名簿業者フリービジネスに、千葉県の同業者から連絡があったのは、2013年11月中旬のことだった。データの中身は約800万人分の名前と住所、生年月日など。400万円と値は張…
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審判[最終回]
第三者委員会の委員長を務める弁護士、久保利英明は困惑した。7月末、ゼンショーホールディングス本社で、調査報告書を社長の小川賢太郎に手渡そうとしたが受け取らない。代わりに手を差し出したのは、すき家を運営する子会社社長の興…
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焦燥
何かがおかしい──。 ゼンショーホールディングス(HD)社長の小川賢太郎が社員の異変を感じ始めたのは、2011年のことだった。東日本大震災後、復興が進む被災地に人材が流出。傘下の牛丼チェーン「すき家」ではアルバイトの採用…