当局の規制が行き届かず、中国でその存在が膨らみ続ける「シャドーバンキング」──。その中核をなすのが利殖商品の「理財商品」だが、その運用には様々な問題が潜む。情報開示が不十分で、金融機関内では理財商品間で利益のつけ替えなどが横行している。

 中国の金融市場では2013年6月、銀行が資金不足に陥り、短期金利が急上昇した。これを受けて、価格が急落したのが債券だ。短期金利が急上昇したのは、資金難に直面している地方政府が、高金利の資産運用商品、いわゆる「理財商品」を通じて資金調達を急いだことも背景にある。

 あおりを受けたのが、あまたある債券ファンドだ。2013年11月には、200に上るファンドが額面割れを起こした。急落した債券を抱えたファンドマネジャーが、損切りを迫られた結果だ。

 ある業界筋は、金融市場全体が資金不足に陥っていることもあり、債券市場で信用リスクは以前よりも高くなっていると指摘する。

 「ただし」とこの業界筋は続けた。「債券市場の信用リスクより、もっと警戒すべきものがある。それは理財商品に組み込まれることが多い『非標準化金融商品』と呼ばれる投資対象だ」。

 「非標準化金融商品」とは、銀行間市場や証券取引所で取引されない利回り商品のこと。具体的には、貸付信託やローン債権、銀行手形、信用状、売掛債権などを指す。

 中国では老舗の運用会社として知られる嘉実(ジャースー)基金の関係者は、「非標準化金融商品への投資は、情報開示が不十分なうえ、実態が不透明な点があり、利益のつけ替えなどが起こり得る仕組みとなっている」と打ち明ける。

元本割れ、表面化しないカラクリ

 金融市場の資金不足が続く中、銀行はより高収益をうたった理財商品の販売に力を入れることで資金を確保しようとしている。その結果、理財商品の利回り競争が発生している。

上記は2013年12月に発売された個人向け理財商品の紹介だ。このように理財商品では10%を超えるような高利回りをうたう商品が増えている。

 投資家に提示している予想収益率は元本保証型で4~5%、非元本保証型ではさらに高い。しかし、実態は「6月の資金不足以降、理財商品の多くは含み損を抱えており、対外的に開示していないだけだ」とある銀行の理財商品の販売担当者は語る。

 ある銀行幹部によると、理財商品が元本割れで満期を迎えるケースは珍しくないという。だが、そのほとんどは表面化しない。なぜか──。

 期間や利率の異なる理財商品を矢継ぎ早に投入することで集めた資金を1カ所にプールし、さらに運用が比較的うまくいっている理財商品から元本割れや期待収益率を達成できない理財商品へと利益をつけ替えることで帳尻を合わせているのだ。

 ある大手銀では、2013年1~9月に実施した内部監査において、100件以上、資産総額にして約100億元(約1700億円)に上る理財商品で、8億元(約137億円)もの利益のつけ替えがあったことが判明した。

 しかし、これは氷山の一角であり、「同様の操作はどこの銀行でも行っている」(大手銀幹部)のが実情だという。

 従って、理財商品を購入した顧客は、期待収益を得られたからといって、満足してばかりもいられない。

 銀行は理財商品についての説明書で、「期待収益率を超過した部分の利率は、投資管理費として銀行が徴収する」と明記している。つまり、投資家は発生するリスクについては丸かぶりしなければならない一方で、期待収益率を上回る利益が出たとしても、その分の果実を得ることはできない。

 仮に銀行が、「収益率を超える利益を出した場合には投資家に還元する」と約束したらどうか。それでも、投資家が収益率を超えるリターンを受け取れる可能性は限りなくゼロに近い。

 例えば、期待収益率5%の理財商品を買い、実際には8%の収益があったとする。だが銀行は先に説明したように、この理財商品で上がった収益を、元本割れや期待収益率に届かない別の理財商品に秘密裏に融通してしまう。冒頭に述べたように、リターンの芳しくない非標準化金融商品に投資している現状ではなおさらだ。

銀行員のモラルも崩壊

 また、理財商品を販売する銀行員らが、よりハイリターンの理財商品を表に出す前に自分たちで購入し、顧客より儲けているケースも散見される。

 仕組みとしては、損失の出にくい「優先部分」を顧客に売り、行員がリスクが高いとされる「劣後部分」を購入する体裁を取るのだ。

 「当行の場合、一般投資家に販売する優先部分の収益率は5%。これに対し行員が購入する劣後部分は最低でも20%、最高では50%に達することもある。優先・劣後構造を持つ理財商品の発売が決まると、まず部長クラスが押さえ、残りをその部下、さらにその部下とおこぼれにあずかっていくのが通例だ」と打ち明ける銀行員もいる。

 ここで指摘しておかなければならないのは、行員が享受している劣後部分の高い収益率は、銀行の的確な投資判断に基づいて生み出されたものではなく、先に指摘した利益のつけ替えにより実現している、という事実だ。

 本来、ハイリスク・ハイリターンの劣後部分は、投資家が損失を被る確率が高いはずだ。だが、ある情報筋は「銀行や証券会社は理財商品でかき集めた巨額の資金プールを背景に、劣後部分に利益を融通している。事実上、行員らはノーリスクで高い収益率を享受しているようなものだ」と指摘する。

 こうしたケースが珍しくないことを、本誌(新世紀)はつかんでいる。2013年9月以降、宏源証券や国信証券などの債券部門の責任者が、劣後部分を組み込んだ理財商品の購入に絡み、当局の調査を受ける事態も発生している。

 宏源証券のケースについて、中国証券監督管理委員会のスポークスマンは、「証券会社の従業員が、自社で販売した理財商品を購入してはならないという規則・規定があるわけではない。ただ理財商品間の利益のつけ替えで顧客の利益を損なうことがあれば、これは違法行為である」と表明している。

 一方、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も、理財商品間における資金の融通や利益のつけ替えを防ぐため、資金プールをやめて分別管理を進めるよう求めてきた。尚福林(シャンフーリン)銀監会主席も、理財商品の資金管理の強化を進めると表明している。

 とはいえ、理財商品間の資金や利益のつけ替えは、現時点ではまだ明確な制限を受けていない。「銀行の内部監査部門には、自行の理財商品間の資金融通が問題だとの認識が全くない。むしろ、極めて正常な行為だと信じ込んでいるふしすらある」(銀行関係筋)という。

 理財商品には、借り入れを利用して高収益を目指す「レバレッジ」の問題を指摘する声もある。

 監督機関に詳細な情報開示ルールの作成を求めたり、第三者評価を取り入れたりする必要があるとの指摘は多い。少なくとも現時点における理財商品には、合理的に見積もることができない隠れたリスクが多く潜んでいることだけは間違いない。それは中国の経済全体のリスクでもある。

「新世紀」記者 張宇哲
(「新世紀」2013年12月2日号©財新傳媒)

日経ビジネス2014年1月6日号 111~112ページより目次

この記事はシリーズ「世界鳥瞰(2014年1月6日号)」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。