創業以来43年間の経常利益率が平均38%という驚異の町工場、エーワン精密の創業者。工作機械に取りつける「スプリング式コレット」なる部品で、国内トップシェアを誇る。ここ数年、中小企業の倒産や廃業が相次いだ日本の製造業。だが、そんな流れが2014年を境に劇的に変わると「町工場の星」は展望する。

梅原氏の予想
  1. 町工場が大復活する
  2. 下請けいじめが減る
  3. 中小が大手を選べるようになる
  4. 春が手の届くところにくる
(写真:井上 直樹/シャクティ)

 日本のモノ作りは衰退したなんてよく言われるけど、2014年を境に間違いなく復活するよ。中でも、製造業を底辺から支える町工場が元気になります。きっとこれまでの苦境が嘘みたいに感じられる状況に向かっていくんじゃないかな。長年、多くの町工場は、仕事を発注する大手メーカーから本当に虐げられてきた。利益の出ないような発注額でも、会社を存続させて雇用を守るために、涙をのんで仕事を受けざるを得ないのが実情だったんだ。

 けれども、2014年から日本の町工場は、製品を買い叩くようなメーカーとはもうつき合わなくてもよくなっていく。町工場の方が、発注元を選べる時代がやってくるわけだ。下請けいじめも減っていくでしょう。

 根拠は単純で、大手の発注量に対して、受注側の町工場の数が、適正水準になってきたからだよ。

 2008年のリーマンショック後の厳しい不況で、多くの中小企業が廃業や倒産に追い込まれた。その結果、下請け業者が一気に減り、取引する町工場を大手メーカーが好きなように取捨選択できるような状況ではなくなりつつあるんだ。

未曾有の不況で本物だけが残る

 もちろん、発注元を自由に選べる立場の下請け業者になるためには、大企業から必要とされる高い技術力を持っていなければならないよ。その町工場が存在しないと、大手メーカーの製造戦略が成り立たない。そのぐらいの存在にならないとダメだ。

 でも、その点、今、生き残っている町工場は心配ない。

 何たって、ここ数十年で最大級の不景気を乗り切った連中だからね。本物だよ。

 設備投資や人材育成を怠らず、確かな技術力を持つ。そんな強い町工場の割合が確実に高まった。多くの業者が、大手が内製したり、ほかで頼んだりしても達成できない品質を実現できる。随分と追い詰められたけど、それでも日本のモノ作り魂は死ななかったんだよ。

 それにしても、ここまでの道のりは長かったな。町工場がいくら頑張って製造コストを引き下げたところで、その果実は大企業に根こそぎ持っていかれる。そんな時代がどれほど長く続いたことか。

 輸出中心の大手メーカーが超円高で経営が苦しかった時期に、町工場の多くは大手に求められるまま、血のにじむ思いで、コスト削減に協力してきた。資材費が上がっても、その分の上乗せを認めてもらえないなんて当たり前だった。それが現在は、アベノミクスのおかげで超円高が是正され、以前では考えられないような水準まで円安が進んだ。それでも、一部の大手メーカーはいまだに町工場にコスト削減を求めてくる。きっと、円安のうまみを自分たちだけで独占したいという思惑があるんだろうね。

 その点、松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助さんは本当に偉かったと思う。「周りにも利益を出していただかなければあきまへん」と言って、下請けに無理な値引きを押しつけることはなかったっていうもんね。今では、そんな下請けを大切にする名経営者がすっかり減った。だからこそ、町工場はつらい時代を過ごしてきた。

 でも2014年、町工場にとって春は手の届くところにある。あともう一息、その春を自分たちで引き寄せる努力をするだけでしょう。(談)

日経ビジネス2013年12月30日号 52ページより

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